親の遺言通り、遺産をすべて「慈善団体に寄付」しました。この場合も「相続税」を払わなければいけないのでしょうか?

配信日: 2025.09.13
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親の遺言通り、遺産をすべて「慈善団体に寄付」しました。この場合も「相続税」を払わなければいけないのでしょうか?
親の遺言に従い、遺産を慈善団体にすべて寄付した場合、「相続税はどうなるのか?」と疑問に思う方は多いでしょう。結論からいえば、遺言に基づいて直接寄付された遺産については、相続税はかかりません。
 
ただし、寄付の仕方や手続きによっては相続税の課税対象になるケースもあるため、注意が必要です。
 
本記事では、遺産を寄付したときの相続税の取り扱いや、非課税となる条件、手続き上の注意点を整理して解説します。
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相続税がかからない? 遺言による「寄付」の扱い

まず、遺言で「遺産を慈善団体へ寄付する」と定められていた場合、その遺産は相続人を経由せず、直接団体へ渡ります。この場合、相続人が財産を取得したとはみなされないため、原則として相続税はかかりません。
 
例えば、親が所有していた自宅や預金を特定の公益法人に遺贈した場合、相続人は一度もその財産を自分のものとして受け取らないので、相続税の課税対象から外れるのです。
 
ただし注意したいのは、寄付された財産が「譲渡」とみなされる場合です。不動産や株式などを遺贈したケースでは、被相続人が死亡時に財産を手放したとみなされ、譲渡所得税が発生する可能性があります。
 
したがって、「相続税は非課税だが、別の税金が関わることがある」という点は押さえておきましょう。
 

相続人が寄付する場合の非課税要件

一方で、一度相続人が遺産を受け取り、その後に慈善団体へ寄付するケースもあります。この場合、原則では相続人がいったん財産を取得するため、相続税の課税対象となります。
 
ただし、国税庁が定める「相続財産を寄付した場合の非課税制度」を利用すれば、寄付した分の財産については相続税がかかりません。非課税が認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
 

1. 寄付するのは相続や遺贈で得た財産そのものであること

現金預金、不動産、株式などが対象です。ただし、一度売却して現金化すると「元の財産」とはみなされず、非課税の特例が使えません。例えば、株式を売却してから現金で寄付すると課税対象となるため、現物のまま寄付することが重要です。
 

2. 相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに寄付すること

期限を過ぎて寄付した場合、非課税特例の適用は受けられません。余裕をもって寄付の意思表示と手続きを進めることが大切です。
 

3. 寄付先が公益性の高い団体であること

国や地方公共団体、公益法人、認定NPO法人などが対象です。任意団体や一般企業は対象外となるため、事前に国税庁のホームページなどで寄付先の適格性を確認する必要があります。
 

4. 寄付を証明する書類を申告書に添付すること

寄付先からの受領証や寄付契約書など、公的に確認できる資料が不可欠です。書類が不十分だと制度の対象と認められないこともあるため、必ず保管・添付するようにしましょう。
 
これらを満たすことで、相続人が行う寄付についても相続税の負担を避けられます。つまり、相続人が寄付を選択する場合には、相続税が非課税になる仕組みを正しく利用できるかどうかが大きなポイントになります。
 

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遺言や寄付に関する注意点とリスク

遺産を寄付する場合、税金以外にも注意すべき点があります。
 
まず、遺言で全財産を寄付するように定めても、相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されています。遺留分を侵害した場合、相続人から取り戻しを求められる可能性があります。実際に寄付を実行する前に、遺言内容が遺留分を侵害していないか確認することが重要です。
 
また、寄付の対象が不動産や株式の場合、現物のまま寄付する必要があります。前述1のとおり、一度売却して現金化すると非課税制度が使えず、相続税を払ったうえで寄付することになってしまいます。さらに、不動産の寄付では名義変更手続き、株式では証券会社を通じた移管手続きが必要となり、時間と手間がかかります。
 
さらに、税務上もリスクがあります。遺贈や寄付の内容によっては、所得税や贈与税の課税が生じる場合があるため、税務署や税理士に相談してから進めるのが安心です。
 

親の遺志を大切に、慈善団体への寄付は正しい手続きで実現しよう

親の遺言で直接慈善団体に遺産を寄付した場合は相続税がかからず、相続人が寄付する場合でも要件を満たせば非課税になります。ただし、遺留分の問題や現物寄付である必要性、所得税の課税など注意点も多くあります。
 
寄付を通じて親の思いを社会に生かすには、税制や手続きを正しく理解し、専門家の助言を受けながら準備することが大切です。親の遺志を尊重しながら正しい手続きを理解して、安心して寄付を実現しましょう。
 

出典

国税庁 No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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