50代・年収350万円で「将来は生活保護かも…」という姉。不安なので「父の遺産2000万円が欲しい」とのことですが、“3分の2”も譲るべきですか?
例えば、父親の遺産が3000万円あり、相続人は自分と姉の2人であるものの、50代の姉は年収350万円程度で貯蓄も少なく、「このままだと将来は生活保護になるかもしれない」といった場合、姉の事情を考慮して多めに遺産を譲るべきなのでしょうか?
本記事では、相続の基本ルールを確認しつつ、実際に姉妹で相続分を調整する際の考え方や注意点を解説します。
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相続分の原則
大前提として、相続の取り分は法定相続分によって決まります。父親に配偶者がいなければ、子ども2人である姉妹が相続人となり、基本的には3000万円を1500万円ずつ均等に分けることとなります。
相続人それぞれの生活状況(収入が少ない、病気で医療費がかかるなど)は、法律上の相続割合を直接的に変える理由にはなりません。つまり、「お姉さんのほうが大変だから」といった事情で、自動的に取り分が増えることはないのです。
ただし、相続人同士が話し合い、合意すれば、取り分を調整することは可能です。例えば、姉が2000万円、妹が1000万円という分け方も、当事者が納得して遺産分割協議書を作成すれば有効となります。
相続分を変えられるケースもある
法律上、相続割合を変えられる場面として「寄与分」や「特別受益」があります。
寄与分は、被相続人(父)の財産の維持や増加に特別な寄与をした相続人がいる場合、その分を多めに受け取れる制度です。
特別受益は、生前に住宅資金援助や結婚資金など、特別に利益を受けた相続人がいる場合、その贈与分を相続財産に加えて計算し、相続割合を調整する仕組みです。
ただし、今回のように「生活に余裕がない」「将来が不安」といった理由は、寄与分や特別受益の対象にはなりません。あくまで姉妹で話し合い、合意のうえで譲るかどうかを判断するしかないといえます。
不公平感をなくすために大切なこと
遺産分割の話し合いは、単なるお金の配分ではなく親から受け継ぐ財産をどう扱うかを、姉妹で共有する大切な場面でもあります。不公平感を減らすためには、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
1. まずは法定相続分を基準にする
感情的にならず、「基本は1500万円ずつ」という土台を確認しましょう。その上で事情を踏まえた話し合いをするほうが、納得感を得やすくなります。
2. 姉の不安を共有する
血を分けた大切な姉の「将来生活保護になるかも」という切実な不安は、簡単に否定できないでしょう。実際に年収350万円で老後資金が十分に用意できていないと、将来の生活に不安を抱える人は多いでしょう。妹側が理解を示すだけでも、相手の心情は和らぐかもしれません。
3. どれくらいまでなら譲れるかを冷静に検討する
姉の事情を考慮して多少多めに遺産を譲るとしても、感情に流されすぎてはいけません。妹自身の今後の生活設計や老後資金を考慮したうえで、譲れる線引きを検討しましょう。
4. 第三者の意見を活用する
税理士や弁護士、あるいは家庭裁判所の調停制度を利用するのも1つの方法です。姉妹だけでは感情的な対立になりがちですが、専門家を介すことで冷静な話し合いがしやすくなります。
まとめ
今回のケースでは、姉が「2000万円ほしい」と希望しても、法律上は1500万円ずつが基本です。姉の生活状況だけで相続分が法律上増えることはなく、増やすためには妹が同意する必要があります。
譲るかどうかは、妹自身の老後や生活設計を踏まえて慎重に判断すべきであり、「感情」ではなく「お互いが納得できる着地点」を探ることが大切です。
出典
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
