80歳の独身の叔父が「一軒家と土地」を持っています。もし遺言を残さずに亡くなった場合、この不動産は“誰が相続”することになるのでしょうか?
本記事では、遺言なしの相続制度の仕組みから、独身・子なしの場合の法定相続人、不在時の制度、手続きの流れと注意点まで解説します。
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目次
遺言がないとき、相続は“法定相続人”に引き継がれる
日本の民法では、被相続人(亡くなった人)が遺言を残していない場合は、民法で定められた法定相続人が相続を受けることになります(=法定相続)。
配偶者は常に法定相続人となり、他の相続人は子や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹の順で決まります。各順位には代襲相続の規定もあります。遺言がある場合は指定された相続人に財産を渡せますが、遺言がなければ法律の定めに従う形となります。
相続開始後、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を含む全財産を分割または共有する形に整理します。その後、財産の譲渡などの処分が可能です。
叔父が独身・子なしの場合:法定相続人は誰になるか?
今回のケース、「独身・子どもなし」の状況だと、以下の順序で法定相続人を探すことになります。
1.配偶者
叔父に配偶者がいれば、その配偶者が最優先で相続人になります(妻・夫が存命であれば)。
2.子・孫
子どもや孫がいれば、その世代が相続人になります。
3.父母・祖父母(直系尊属)
子どもがいなければ、叔父の両親や祖父母が相続人になります。
4.兄弟姉妹・甥姪(兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば代襲相続)
父母もすでに亡くなっていれば、兄弟姉妹が遺産を相続する人になります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(叔父から見ると甥・姪)に代襲相続の可能性があります。
もし叔父の両親はすでに亡くなっていて、兄弟姉妹が何人かいるなら、その兄弟姉妹が一軒家・土地を相続することになるでしょう。
兄弟姉妹も亡くなっていて、その子ども(甥・姪)がいれば、代襲相続で甥姪が相続人になるケースもあります。
相続人が全くいない場合(相続人不存在)の制度
一方で本当に誰も相続人がいないケースもありえます。その場合、民法では「相続人不存在」と扱われます。相続人不存在の場合の流れとしては、
・家庭裁判所が 相続財産管理人 を選任
・債権者への支払い、遺留債務の清算などの処理を行う
・特別縁故者制度 による財産分与の申立て受付
・特別縁故者がいなければ、残った財産は 国庫帰属 となる
国庫帰属とは、国(政府)がその不動産を受け取ることを意味します。
特別縁故者とは、被相続人と特別な関係があった人(長年世話をしてきた親戚、友人など)で、法定相続人ではないが相続に関与できる人を指します。遺言がない場合、この制度が唯一“相続人以外”の人が財産を受け取る可能性を残す経路となります。
特別縁故者制度・国庫帰属とは?ケースの流れ
このような状況で不動産が最終的にどうなるかは、次のような流れになることが多いです:
1.相続開始 → 相続人捜索 → 法定相続人が見つからなければ相続人不存在と判断
2.相続財産管理人が選ばれ、不動産を含めた遺産管理・処理を行う
3.債権債務を差し引いたうえで残った財産について、誰かが「特別縁故者」として申立てをすれば、家庭裁判所が審査・分与決定
4.特別縁故者の申立てがなければ、最終的には不動産も国庫へ帰属する(国が取得する)制度となります
実際は、不動産が国庫に帰属する前に、売却・換価処分され、現金化して国に納められる場合が多いです。
不動産相続で注意すべき手続き・争いのリスク
遺言なしの不動産相続では、以下のようなトラブル・注意点が起こりやすいです。
・遺産分割協議の不一致
相続人同士で不動産の分割割合・所有方法で揉めることが多いです。
・共有名義問題
不動産を複数人で共有状態にしてしまうと、その後の売買・管理でトラブルが起こりやすいです。
・名義変更手続き(相続登記)
名義を書き換えるためには登記手続きが必要で、協議書・戸籍・住民票・固定資産評価証明などをそろえる必要があります。
・税金・評価額の争点
相続税・不動産取得税・固定資産税評価額をどのように評価するかで相続人間で争いになることがあります。
・特別縁故者の主張
相続人ではない人が「長年世話をしてきた」などの理由を主張して特別縁故者を名乗ることが、争いに発展するケースもあります。
まとめ
遺言を残さず一軒家・土地を持っていた叔父が亡くなると、法定相続人がいればその人たちが共有か分割協議で相続します。独身・子なしであれば、父母・兄弟姉妹・甥姪などが相続する可能性があります。
もし本当に相続人が存在しなければ、特別縁故者制度や国庫帰属の制度が働くことになります。不動産だからこそトラブルになりやすいので、生前に遺言を用意し、関係者と話をしておくことが極めて重要です。
出典
裁判所 遺産分割調停
法務省 相続土地国庫帰属制度について
国税庁 No.4602 土地家屋の評価
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー