子どもがいない伯母が亡くなった後、入居していた施設から「未払い分50万円を払ってほしい」と連絡がありました。甥である私に払い義務があるのでしょうか?
本記事では、甥という立場で請求を受けた際に、法的な支払い義務があるのか、どのように対応すべきかを解説します。
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目次
なぜ施設から請求が届いたのか? その理由と背景
介護施設に入居していた人が亡くなった場合、その利用料の未払い分が残っていることがあります。たとえば、月末の引き落とし前に亡くなったり、亡くなる前に支払いが滞っていたりしたケースです。
施設としては、未払い分を回収するため、相続人や保証人、連絡先がわかる親族などに連絡することがあります。ここで問題となるのが、「連絡が来た=支払い義務がある」と誤解されやすいことです。しかし、連絡が来たからといって、必ずしもその人に法的な義務があるとは限りません。
施設側も、詳細な関係性まで把握できないまま、確認のために親族へ連絡しているケースもあります。つまり、支払いを求められたとしても、まずは冷静に状況を確認することが大切です。
甥に支払い義務はある? 法的な立場を整理しよう
甥という立場で、亡くなった伯母の未払い費用を支払う法的な義務があるのか、気になるところです。結論からいえば、原則として甥には支払い義務はありません。
法律上、支払いの義務が生じるのは「相続人」となった場合です。相続人とは、亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぐ立場の人を指します。通常は配偶者や子どもが優先されますが、子どもがいない場合、親や兄弟姉妹が相続人になります。
甥が相続人となるのは、兄弟姉妹もすでに亡くなっていたり、相続放棄をしていたりなどの特別な事情がある場合に限られます。ですので、自分が「相続人であるかどうか」が最初の判断ポイントになります。
また、施設の「保証人」や「連帯保証人」になっていた場合は、契約に基づいて支払い義務が発生する可能性もあります。契約書の有無や署名した記録があるかを確認してみましょう。
相続人だった場合はどうなる? 相続放棄という選択肢も
万が一、自分が相続人に該当していた場合はどうすればいいのでしょうか。この場合、伯母の財産を受け継ぐと同時に、借金や未払い費用などの「マイナスの財産」も相続することになります。今回のような施設の未払い分50万円も、その対象に含まれます。
しかし、負債を引き継ぎたくない場合は、「相続放棄」という選択が可能です。相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになり、未払い費用を支払う必要もなくなります。
ただし、注意点があります。相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立てを行わなければなりません。期限を過ぎると、原則として自動的に相続を承認したとみなされるため、早めに対応することが大切です。
また、「保証人」や「連帯保証人」だった場合、相続放棄しても支払い義務は残ります。
まとめ:まずは自分が相続人かを確認し、冷静に対応を
施設から突然届いた「未払い金の請求」。甥という立場で戸惑うのも無理はありませんが、まずは自分が相続人なのかどうかを確認することが大切です。
もし相続人でなければ、法的に支払い義務はありません。施設側の請求に対しても、「相続人ではないので、支払えません」と伝えることができます。一方で、相続人だった場合でも、相続放棄という選択肢があります。ただし、相続放棄には期限があるため、早めの対応が必要です。
また、相続人かどうかにかかわらず、もし施設の契約時に「保証人」や「連帯保証人」になっていた場合は注意が必要です。保証人としての立場は相続とは別に扱われるため、相続放棄をしても支払い義務が残ります。
請求書が届いたら、慌てて支払う前に、契約内容や自分の立場をしっかり確認し、必要に応じて弁護士や司法書士などに相談することをおすすめします。状況を整理することで、適切な対応が取れるはずです。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百十五条
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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