【相談】配偶者居住権というのができたそうですけど、内縁の妻にも使えますか?
配信日: 2019.06.05 更新日: 2020.04.07
回答:「残念ながら、内縁の方に配偶者居住権は使えません。法律上の婚姻が要件です。しかし、信託を使えば内縁の方の居住や老後資金の確保も可能ですよ。」
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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【配偶者居住権の概要】
昨年、相続法が改正されました。施行は本年1月から数回に分けて始まっています。注目の「配偶者居住権」は来年2020年4月から施行されます。
配偶者居住権の第一の目的は、配偶者の生涯の住居を確保した上で、他の財産も取得しやすくして老後の生活の安定を図るということです。
そして、もう一つ配偶者居住権の効果として立法段階で上げられていたのが、跡継ぎ遺贈に似た効果が得られるということです。例えば、熟年再婚した夫婦の夫の相続で、自宅をまず妻に遺贈し、妻の死亡後は血がつながっている前妻の子に遺贈したような効果が得られるのです。
このように妻に生涯の住居を確保した上で、妻の死後は妻の子ではなく自分の子に自宅を取得させることができるのです。
しかし、熟年再婚では相続関係などが複雑になるのを避けるため、入籍せず内縁関係とする方も多いのです。その場合は、冒頭のように配偶者居住権が使えません。
【民事信託の信託受益権】
民事信託なら、内縁の妻の住居を確保し、妻の死亡後は直系の子に自宅を承継することが可能です。信託の受益者には資格要件はなく内縁でも全く問題ありませんので、跡継ぎ遺贈の希望が達成できるのです。
もし、内縁の妻と子の関係が良くない場合には、受託者を子以外にお願いすることで、妻や子の負担を軽減することも可能です。
民事信託の受益者の資格に制限はありませんので、当然入籍している妻に対しても使えます。2つの制度の違いを理解した上で、どちらが良いか考えることが大切です。
新しい相続法の「配偶者居住権」と民事信託の「信託受益権」の効果は似ているところもありますが同じではありません。その違いを下表にまとめました。
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【どちらを選ぶ?】
相続税に関しては、配偶者居住権の方が有利です。これに対して、対象や期間、使用方法などに制限がないことから、柔軟な管理・処分を考えると民事信託に軍配が上がりそうです。
あなたは、どちらがいいですか。自宅の評価額、妻と子の信頼関係などしっかりと考えて結論を出しましょう。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士