父の遺産「1億円」を母と2人で相続しました。母が私の「相続税分」も払ってくれるそうなのですが、贈与税はかかりますか?
今回は、相続税を自分以外の人が払っても問題がないのか、ほかに課税される可能性がある税金があるのかなどについてご紹介します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
相続税は親に払ってもらってもよい?
税金は、課税対象となった本人が納めなければなりません。たとえ親子間であっても税金の肩代わりをすると、贈与したとみなされ、金額によっては贈与税の課税対象になる可能性があります。
贈与税の課税基準は、年間110万円(基礎控除)です。つまり、今回のケースでは、払うべき相続税額が110万円を超えていると、贈与税が課されます。相続税は以下の手順で計算が可能です。
(1)遺産総額と相続財産に加算される贈与を合計する
(2)(1)の金額から債務や葬儀費用といった金額を控除する
(3)(2)から「3000万円+600万円×法定相続人数」(基礎控除)を差し引いたものが課税対象となる金額
(4)(3)の金額を法定相続人で法定相続分通りに分けたとして、分配する
(5)(4)で分けた金額を基にそれぞれの法定相続人の相続税額を計算する
(6)(5)の金額を合計し、実際に相続したり遺贈を受けたりした金額の割合で再分配する
(7)必要に応じて控除や加算を適用した金額が、実際に支払う税額
なお、贈与税の基礎控除は1年間で受け取った金額の合計なので、相続税を払うのと同じ年にほかの贈与を受け取っていた場合は、払ってもらった相続税額が110万円に満たなくても課税される可能性があります。
代わりに払ってもらったときの贈与税額の例
今回は、相続税を母親に払ってもらった場合にかかる贈与税額を、以下の条件で計算しましょう。
・相続財産は合計1億円
・遺贈を受けた人や加算される贈与はない
・債務や葬儀費用なども考慮しない
・同じ年にほかの贈与は受けていない
・法定相続人は母親と子ども1人の合計2人
・子どもは18歳以上
・法定相続分通りに相続したとする
まずは、代わりに払ってもらう相続税額を計算します。今回のケースだと、基礎控除額は4200万円です。課税対象の金額は5800万円になります。
5800万円を法定相続分通りに分けると、母親と子どもで2900万円ずつです。国税庁によると、2900万円の相続税率は15%、控除額が50万円のため、相続税は1人当たり385万円となり、相続税の合計額は770万円になります。
今回は実際の相続も法定相続分通りなので、1人当たりの負担する相続税額も385万円です。しかし、亡くなった父親の妻である母親には配偶者控除が適用されるため、相続税の負担はありません。
もし子どもにかかる相続税385万円を母親が負担した場合、贈与税としては110万円を差し引いた275万円が課税対象となります。国税庁によれば、このとき、贈与税率は15%、控除額が10万円のため、子どもに課される贈与税額は31万2500円です。
親から贈与されても課税されないケースとは
税金を人に払ってもらうことは贈与税の課税対象になる可能性がありますが、ほかの用途で親からお金を贈与された場合は、非課税になるケースもあります。
まず、生活費や教育費の名目で受け取ったお金は、その金額が必要な範囲かつ必要なタイミングで渡されたものに限って、非課税です。ただし、受け取ったお金を生活費や教育費に使わず、別の用途で使用すると課税対象となります。
もし相続税の負担で生活に影響が出そうなときは、相続税を払ってもらうのではなく、生活費を負担してもらうとよいでしょう。なお、生活費や教育費のほかにも、年末年始の贈答やお祝い金なども非課税です。
税金を人に払ってもらった場合は贈与税が課税される可能性がある
税金を人に払ってもらうと、贈与として金額によっては贈与税が課される可能性があります。贈与税は年間110万円を超えると課されるので、もしお金を負担してもらう場合は、110万円を超えていないか確認しておきましょう。
なお、親からの贈与は、生活費や教育費であれば、受け取るタイミングや使い道によっては非課税です。金銭面での負担を減らしたいのであれば、相続税を代わりに払ってもらうのではなく生活費を援助してもらうことも検討するとよいでしょう。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版)財産を相続したとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー