夫の死後、妻名義の預金が「遺産分割」の対象になる場合がある!? “名義預金”として扱われるのはどんなとき?
名義は妻でも、実質的には夫が出したお金だったとみなされると、その預金は「名義預金」として扱われ、他の相続人との間で分割の対象になる可能性があるのです。本記事では、名義預金と判断されるポイントや、その防止策について解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
名義預金とは?
名義預金とは、預金口座の名義と、実際の所有者が一致していない預金のことです。例えば、妻名義の通帳に入っているお金であっても、実際には夫の収入や資産を原資として作られ、通帳や印鑑も夫が管理していた場合、その預金は妻のものではなく夫の財産と判断される可能性があります。
相続においては、被相続人が亡くなった時点で持っていた財産が遺産とされます。名義だけ妻であっても、実質的に夫が管理・運用していたとみなされれば、その預金も被相続人の財産として相続税の課税対象です。
特に、相続税の申告時や遺産分割協議の場面では、税務署や他の相続人が名義預金の存在に注目し、「この預金も分けるべきだ」と主張されることがよくあります。
名義預金と判断される主なケース
では、どのような場合に名義預金とされるのでしょうか。判断には、いくつかのポイントがあります。
まず重要なのは、「原資(お金の出どころ)」です。妻名義の預金であっても、そのお金が夫の収入や貯金から出ていたのであれば、実質的には夫の財産とみなされる可能性が高くなります。
また、口座の管理状況も判断材料になります。例えば、妻名義の通帳を夫が持っており、入出金の操作も夫が行っていた場合、名義預金とみなされやすくなります。妻が口座の存在を知らず、自由に使えなかったといったケースは典型です。
さらに、贈与の意思があったかどうかも重要です。夫が「これは妻への贈与だ」と明確に意思表示をしていた場合、その預金は妻のものと認められることがあります。ただし、そのためには贈与契約書や贈与税申告の有無など、多角的な証拠が求められます。
このように、名義預金と判断されるかどうかは、名義よりも「実質的に誰の財産か」という視点で判断されるのです。
妻の固有財産と認められるために必要なこと
一方で、妻名義の預金が名義預金ではなく、妻自身の財産であると認められるケースももちろんあります。例えば、妻がパートや自営業などで得た収入を、自分の名義で預金していた場合、そのお金の出どころは夫ではないため名義預金とはされません。
また、妻が自分で管理していた通帳や印鑑を使って、自ら入出金をしていたような場合も、実質的な管理者は妻であると判断されやすくなります。
贈与が成立している場合は、そのお金が名義人のものとして認められます。例えば、夫が妻に対して毎年一定額を贈与し、妻がそれを預金したケースでは、贈与契約書や贈与税の申告書などの証拠を示すことで、妻の固有財産と認められる可能性が高まります。
相続トラブルを防ぐための対策とは?
名義預金の問題は、相続人同士のトラブルを招きやすいテーマです。特に、夫婦間で「妻の預金だと思っていたものが遺産」とされると、他の相続人から分割を求められ、思わぬ争いになることがあります。こうした事態を避けるためには、以下のような対策が有効です。
まず、贈与の意思を明確にすることが大切です。生前に夫から妻への贈与があった場合は、口約束ではなく書面で契約書を残しておくとよいでしょう。さらに、贈与税の申告も行っていれば、より確実に贈与として認められやすくなります。
次に、通帳や印鑑の管理を分けることです。妻が自分の預金を自分で管理している実態があることで、名義預金とは認められにくくなります。
また、相続が発生した場合には、相続税に詳しい税理士や弁護士に相談し、名義預金のリスクについて早めに確認することが重要です。
名義預金とみなされないよう、実態で証明できる準備をしよう
名義預金の問題は、形式的な名義だけで判断されるものではありません。預金の出どころ、通帳の管理状況、贈与の有無といった実態が重視されます。たとえ妻名義の口座であっても、実質的に夫の財産とみなされれば、それは遺産として扱われ、相続人全員の共有財産とされる可能性があります。
相続でのトラブルや相続税の加算リスクを避けるためにも、日頃から預金の管理状況や資金の流れを明確にし、必要に応じて贈与契約書や証拠書類を整えておくことが大切です。早めの準備と専門家のサポートで、大切な財産を守りましょう。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー