親と同居すれば土地の評価額が「最大8割」下がって“相続税”が軽減される!? 亡くなる「一週間前」からの同居でも適用されるの?
では、親が亡くなる一週間前から同居を始めた場合でも、この特例は本当に使えるのでしょうか?
本記事では、その仕組みと注意点について解説します。
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「小規模宅地等の特例」とは?
「小規模宅地等の特例」は、相続税法上の制度で、被相続人(亡くなった人)の自宅や事業用地など、特定の宅地を相続する際に、その評価額を減額できる仕組みです。
特に、被相続人の住んでいた住宅の敷地(=特定居住用宅地)を、同居または生計を一にしていた親族が相続する場合、「330平方メートルまでの範囲で評価額が80%減額される」という優遇措置が受けられます。
これにより、仮に土地の評価額が5000万円だった場合でも、特例適用により1000万円の評価に抑えられ、結果として相続税が大幅に軽減されるのです。
特例を受けるための「同居親族」の要件とは?
小規模宅地等の特例は、誰でも同居していればこの特例が受けられるのではなく、適用にはいくつかの要件があります。
特に重要なのが、相続人が被相続人と「同居していた親族」であることです。ここでいう親族とは、被相続人の6親等以内の血族または3親等以内の姻族です。配偶者であれば、同居していなくてもこの特例は適用されます。また、同居していた親族とは、相続開始(被相続人の死亡時)まで継続して同じ家で日常生活を共にしていたことが求められます。
ただし、形式的に同じ家に住んでいただけでは不十分で、以下のような実態が求められます。
●住民票上の住所が同一である
●実際に同じ家で寝起きしていた
●光熱費や生活費の一部を共同で負担していた
●日常生活を共にしていた
また、同居親族がその土地を相続した後も、相続税の申告期限(原則、相続開始後10ヶ月)までその家に居住し続ける必要があります。途中で売却や転居があると、特例が適用されなくなる場合がありますので注意が必要です。
「亡くなる直前の同居」でも適用されるのか?
では、今回の「亡くなる一週間前に親と同居を始めた」というケースではどうでしょうか。実は、小規模宅地等の特例において、同居期間の長さに明確な基準は設けられていません。したがって、〇ヶ月以上同居していなければならないという具体的な規定は、法律上存在しないのです。
税務署が特例の適用を認めるかどうかは、「実質的に同居していたかどうか」によって判断されます。つまり、たとえ同居期間が短くても、生活の実態がともなっていれば認められる可能性はあります。
一方で、亡くなる直前に住所を移しただけ、数日泊まっただけ、というようなケースでは、「生活の拠点が移っていた」とまではいえず、同居の実態がないと判断されるリスクが高いです。実際には、以下のような点が判断材料になります。
●住民票の移動日と、実際の居住開始日が一致しているか
●家財道具の搬入状況、生活スペースの変化などの証拠があるか
●公共料金の使用実績、郵便物の転送状況などが生活実態を示しているか
これらの実態証拠が不足していれば、たとえ住民票を移していても、形式的な同居とみなされ、特例の適用が認められないことがあります。
相続税軽減の特例は「早めの同居」と「実態の証明」がカギ
小規模宅地等の特例は、相続税対策として非常に有効な制度ですが、適用には厳格な条件があります。亡くなる直前の同居でも法律上は可能性があるものの、日常生活の実態がともなっていなければ認められないリスクが高まります。
したがって、評価額の大幅な減額を確実に狙うには、早めに同居を開始し、生活拠点として日常的な生活実態があることを証明できるよう準備を進めることが重要です。不明点がある場合は、相続に詳しい税理士に相談することで、安心して制度を活用できるでしょう。
出典
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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