亡くなった父は2つの口座を持っており、それぞれ「1500万円」と「800万円」の貯蓄があります。この場合、口座単位で相続することになるのでしょうか?

配信日: 2025.09.29
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亡くなった父は2つの口座を持っており、それぞれ「1500万円」と「800万円」の貯蓄があります。この場合、口座単位で相続することになるのでしょうか?
親が亡くなったあとに直面するのが、預金口座の相続手続きです。口座がひとつなら単純に思えますが、複数ある場合には「この口座は兄が、もう一方は妹が」などに分けられるのではないかと考える方も少なくありません。
 
しかし実際には、相続は口座ごとに行われるわけではなく、亡くなった方が残したすべての財産をひとまとめにして扱うのが基本です。そこで本記事では、複数口座がある場合の相続の仕組みや手続きの流れ、税金の注意点について解説します。
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複数口座の預金は口座ごとではなく、遺産全体として扱われる

亡くなった方に複数の口座がある場合でも、相続は口座単位では進みません。銀行預金や不動産、株式などを含めた遺産全体が相続財産となり、相続人が「遺産分割協議」で遺産全体の分け方を話し合って、分け方を決める必要があります。
 
例えばA銀行に1500万円、B銀行に800万円があったとしても、「A銀行は長男、B銀行は次男」などと自動的に分割されることはありません。
 
金融機関は各口座の残高を遺産の一部として管理しているため、相続人の一人から「この口座だけ解約したい」といった依頼を受けても、相続人全員の合意を示す遺産分割協議書なしには対応してくれません。解約や払い戻しを行うには、相続人全員の合意を証明する遺産分割協議書の提出が必要になります。
 

相続手続きの流れ:口座凍結から分割まで

口座名義人が亡くなると、金融機関はその事実を確認した時点で口座を凍結します。凍結されると預金の引き出しや振り込みはできなくなり、相続人は次の流れで手続きを進める必要があります。
 

1. 相続人を確定する

戸籍謄本などを集め、誰が法定相続人なのかを明らかにします。被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集することが一般的です。
 

2. 遺産分割協議を行う

相続人全員で話し合い、預金をどう分けるかを決めます。預金をどう分けるかもここで決め、合意内容は遺産分割協議書にまとめます。その際には、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
 

3. 金融機関に書類を提出する

遺産分割協議書、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書などを金融機関に提出します。これにより、口座の解約や払い戻しが可能になります。
 
この手続きを経なければ、相続人の一部が勝手に口座を解約したり、預金を引き出したりすることはできません。トラブルを防ぐためにも、相続人全員での合意形成をすることが不可欠です。
 
なお、口座の凍結解除には金融機関の審査期間があり、書類不備や相続人間のトラブルがあると手続きが遅れるため、必要書類をそろえ、相続人全員が納得できる話し合いを早めに進めることが重要です。
 

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金額が大きい場合に注意したい相続税と分割方法

相続財産の金額が大きい場合は、相続税がかかる可能性があります。相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、相続人が2人の場合は4200万円までが非課税です。今回のケースでは預金だけで2300万円ですが、不動産や生命保険などが加われば課税対象になる可能性が高まります。
 
また、分割方法についても注意が必要です。預金は現金化しやすく、複数の相続人に公平に分けやすい資産です。一方で、「A銀行は兄が、B銀行は妹が」というように口座ごとに分けたい場合もあるでしょう。
 
この分割方法は、相続人全員の合意を得て遺産分割協議書に明記すれば可能となります。ただし、これはあくまでも協議による決定であり、制度として口座単位の相続が認められているわけではありません。
 
さらに、預金の一部を葬儀費用や当面の生活費に充てたい場合もあります。しかし、口座は死亡により凍結されるため、この資金を動かすには所定の手続きが必要です。資金繰りに困らないよう、早めに金融機関に連絡し、必要な書類を整えることが重要です。
 

複数口座があっても相続は「全体」で考えよう

亡くなった方に複数の口座を保有していても、相続は口座単位ではなく遺産全体を対象に行われます。解約や払い戻しの際には、相続人全員の合意を得た遺産分割協議書を作成し、金融機関に提出する必要があります。
 
預金額が大きい場合は相続税がかかる可能性もあるため、基礎控除額を確認し、課税対象となるかどうかを早めに把握しておきましょう。分割方法は相続人の合意によって柔軟に決められますが、金額が大きい場合や相続人同士の合意形成が難しい場合には、弁護士や税理士など専門家に相談することをおすすめします。
 
複数の口座があっても、大切なのは「口座単位」ではなく「相続財産全体」で考えることです。正しい知識で準備を進めれば、相続手続きを円滑に進めることができるでしょう。
 

出典

一般社団法人全国銀行協会 預金相続の手続に必要な書類
国税庁 No.4152 相続税の計算
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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