妻に毎月“10万円”仕送りしているけど贈与税はかかる? 生活費と認められる範囲を解説
本記事では、その範囲や注意点を整理します。
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
贈与税と「生活費・教育費」の非課税ルール
贈与税は、個人が他の個人に財産を無償で渡した場合に課されます。しかし、これには例外があります。そのうちのひとつに、扶養義務者から受ける生活費や教育費があります。
国税庁によれば、これらは、「必要な都度直接これらに充てるためのもの」で「通常必要と認められる範囲」であれば、贈与であっても贈与税は課税されません。それも当然です。
親が子どもの学費を払って、それが贈与扱いされたり、夫婦間で専業主婦(主夫)である配偶者の生活費を負担することが贈与扱いで課税されたりしてしまっては、大変なことになってしまいます。
通常認められる範囲の負担の具体例には、下記のようなものがあります。
●家賃
●食費
●医療費
●学費
●その他日常生活に必要な支出
しかし、上記のような生活費や学費といった名目で渡したお金であっても、全額ないし余ったお金を貯蓄したり、株式投資や不動産購入など資産形成に使ったりした場合は例外です。その場合は、通常の贈与として贈与税の対象となります。
つまり、毎月10万円を妻に仕送りしていても、それが全額住居費や生活費として消費されている限り、贈与税はかからないというわけです。
「10万円」の仕送りは一般的にどう扱われる?
しかし、ここで気になるのは、「通常認められる範囲」がいくらまでなのかという点です。この点、一般的には10万円程度であれば、十分必要な範囲に含まれると考えられます。
特に単身赴任を含め、夫婦で別居している場合や、配偶者が専業主婦(主夫)やパートタイム労働で働いており、1人で生活できるだけの収入を得ていない場合は、おそらく非課税となるでしょう。
なお、参考程度に贈与税の額も確認しておきましょう。
贈与税は、非課税範囲となる基礎控除が110万円あるため、毎月10万円、年間120万円が課税対象である贈与とされても、実際にかかる贈与税は、120万円のうち10万円の部分に対してです。
10万円にかかる贈与税の税率は10%です。すなわち、贈与額120万円にかかる贈与税は1万円となります。
贈与税を避けるための工夫と記録の残し方
とはいえ、あくまでも上記は原則論です。相続で大きなお金を得たり、事業を営んでいたりする場合は、税務署からの税務調査で贈与全般についても調査対象となる可能性があります。
そんなとき、実際には非課税の贈与であっても、外形的にはなかなかそれが判断できない状態であると、課税されてしまう恐れもあります。
そのため、仕送りは銀行振り込みの形で、生活費という明細を残すことが有効です。また、できるだけ毎月何日に10万円振り込むという形で、額と日付を固定し、仕送りであることがより客観的に分かるようにするとよいでしょう。
まとめ
夫が妻に毎月10万円を仕送りしている場合、それが生活費や教育費として必要となる都度、通常必要な範囲での贈与であれば、贈与税はかかりません。問題になるのは、余った資金が貯金や投資に回されるケースです。
安心のためには、仕送りは銀行振り込みで明細を残し、生活費として消費されていることを確認しておくのがベストです。
とはいえ、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。10万円全額が貯金や投資など生活費や教育費以外で使われていない限りは、贈与税について過度に心配する必要はないでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者 : 柘植輝
行政書士