実家に「月3万円」入れてたけど、母が“貯金”してくれていた!「元は自分のお金」でも、1人暮らし資金で300万円以上もらったら“贈与税”はかかるのでしょうか?
そのお金を親が貯めていてくれて、結婚や実家を出るタイミングで渡してくれたらうれしいはずです。仮に月3万円を9年間貯めていたとき、総額は300万円を超えます。
ただし、元は自分のお金であったとしても、一度渡したものを再度受け取ると贈与税がかかる可能性があり注意が必要です。本記事では、このケースでは贈与税がいくらくらいになるのか、贈与税課税を防ぐ方法はないのかを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
息子から母への毎月3万円は非課税
毎月3万円を母親に渡すと、「息子から母への贈与」が成立します。本来家族間の生活費の受け渡しは贈与には当たりませんが、生活費として使わず貯蓄していた場合は贈与の対象になることに注意が必要です。
ただし贈与には年間110万円までの基礎控除があるため、年間36万円にとどまるこのケースでは贈与税は発生しません。つまり、親に生活費を渡している段階で税金がかかる心配はないのです。
母から息子に返すと贈与扱いに|口座名義を変えても非課税にはならない
注意が必要なのは、親が貯めていたお金を返してくれるときです。「自分のお金を返してもらうだけ」と考える人もいるでしょう。
しかし、元のお金は自分のものであっても母親に渡した時点で母親の財産です。そのお金を子どもに渡すことは「母から子への贈与」とみなされます。
例えば子が母から9年分324万円を一括で受け取った場合、基礎控除110万円を差し引いた214万円に課税がなされ、贈与税は22万1000円となります。これを翌年の2月15日から3月15日までの間に申告・納税しなければなりません。
また、母親が息子名義の口座に積み立てておけば毎月贈与していることになると考える人もいるでしょう。これは大きな誤解で、通帳や印鑑を母親が管理している限りは贈与は成立しないと考えられています。
子どもが自由に引き出せる状態になったときに初めて贈与と判断されるため、324万円の贈与が一度に行われたとみなされ、贈与税が発生するのです。
贈与税を避ける方法と活用できる非課税制度
では、税金をかけずに親から子へお金を渡すにはどうすればよいのでしょうか。
例えば、結婚式の費用であれば非課税とされるケースがあります。「結婚式の費用を負担するのは親である」ということが慣習として認められることもあり、「本来支払う人が支払っただけ」という形になれば贈与税の対象外となる可能性が高いのです。
ただし、専門家の中には結婚式費用の援助は贈与に当たるとする意見もあります。最終的には税務署の判断に委ねられることに注意が必要です。
確実に非課税にしたいのであれば、2027年3月31日まで延長された「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」制度を使いましょう。
結婚に関する費用に関しては最大300万円までを非課税で受け取れます。金融機関で専用口座を開設する必要がありますが、挙式費用のほか新居の準備にかかる費用も対象となる、確実に非課税にできる方法です。
また、一人暮らしを始める際の引っ越し費用や生活費といった「実費」に当たる支出も非課税扱いとなります。ただし、単に貯蓄に回してしまうと贈与税の対象になってしまうため要注意です。
もし贈与税の負担を避けたい場合には、まとまった金額を一度に受け取らず、毎年110万円以下に分けて複数年にわたり受け取る方法もあります。例えば324万円であれば、3年に分けて受け取ることで課税を避けられます。
まとめ
親が生活費として子どもから受け取ったお金をまとめて渡す場合、110万円を超える部分は贈与税の対象となります。「渡したお金を返してもらっただけ」と軽く考えてしまうかもしれません。
しかし、贈与税が発生するケースでは、申告しなければ延滞税や無申告加算税などのペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。
とはいえ結婚式など特定の用途であれば非課税制度を利用できます。非課税制度を使えない場合でも、毎年の贈与額を基礎控除内に抑えることで贈与税を回避することが可能です。
大きな資金を受け取る際には、贈与税の仕組みを理解した上で、必要に応じて制度を利用するなど計画的に進めましょう。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士