父が亡くなりましたが、“実家の名義”はまだ“父”のままです。名義変更をしないと税金面で不利益になることはありますか?

配信日: 2025.10.07
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父が亡くなりましたが、“実家の名義”はまだ“父”のままです。名義変更をしないと税金面で不利益になることはありますか?
父の死亡後、実家の名義が父のままになっている方は少なくありません。「このままでも生活に支障はないし、急がなくてもいいのでは?」と考えてしまうこともあるでしょう。しかし、名義変更をしないまま放置すると、税金や法律面で思わぬ不利益が生じる可能性があります。
 
本記事では、名義変更を怠った場合にどのようなリスクがあるのか、誰に名義を移すのが有利なのか、さらに手続きの流れまでを解説します。
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名義変更を放置すると起こる税務・法務上のリスクとは?

実家の名義を父のままにしておくと、いくつかのリスクがあります。
 
まず、2024年4月から「相続登記」が義務化されました。相続人が不動産を相続した場合、被相続人が亡くなったことを知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。これを怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
 
次に、固定資産税や都市計画税などの扱いです。相続登記がされていない場合、納税通知は相続人の一人等に届きますが、実際には法定相続人全員が納税義務を負います。
 
なお、「小規模宅地等の特例」で相続税の優遇措置を受けるには、居住実態があることが要件ですが、名義変更がされていないからといって直ちに特例が受けられなくなるわけではありません。ただし、建物が放置され「特定空家等」に指定されると特例が適用されず、税額が大きくなることもあります。
 
さらに、将来家を売却したいときにも支障が出ます。登記簿上の所有者が父のままでは、売却や担保に入れるといった手続きができません。売却時には取得費や税金の計算も必要ですが、名義が整理されていないと余計な手間や税負担につながることがあります。
 

母・子・共有、名義を誰にするのが有利なのか

名義変更を行うときには、誰に名義を移すかも重要です。
 
まず知っておきたいのは、相続税の負担を軽減する「小規模宅地等の特例」という制度です。これは被相続人が住んでいた宅地を相続人が引き続き利用する場合に(配偶者は無条件、それ以外は同居や保有継続などの要件あり)、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
 
母親に相続させる場合、母が引き続き住むかどうかにかかわらず、小規模宅地等の特例は無条件で適用され、相続税の負担も軽減されることが多いです。ただし、母が亡くなったときには、再び相続が発生する点も考慮する必要があります。
 
子どもに名義を移すと、単独所有であれば将来的な売却や管理はしやすくなります。ただし、子どもが実家に住んでいない場合には、小規模宅地等の特例が受けられない可能性があり、税金面で不利になることもあります。
 
母と子で共有名義にする方法もあり、双方が所有権を持つため管理しやすいと考える方もいるでしょう。しかし、不動産の売却や貸し出しなどには共有者全員の同意が必要で、意思が分かれた場合には管理・処分に支障をきたすリスクがあります。
 
このように、誰が相続して居住するかによって利用可否が変わるため、名義を誰にするかは慎重に判断しましょう。
 

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名義変更手続きの流れ・必要書類・費用

名義変更の手続きは、法務局で「相続登記」を行うことで完了します。大まかな流れは次のとおりです。
 

(1)相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を相続するかを決める
(2)協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成する
(3)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、不動産取得者の住民票、印鑑証明書(遺産分割協議の場合)、固定資産評価証明書などの必要書類を準備する
(4)法務局に所有権移転登記の申請を行う

 
費用としては、不動産の評価額に応じて「登録免許税」がかかります。登録免許税は、相続登記の登録免許税は、「不動産の固定資産税評価額×0.4%」が基本です。さらに司法書士に依頼する場合は、報酬として数万~10万円程度が別途必要になります。
 
注意点として、相続税の申告期限は「父が亡くなった日から10ヶ月以内」です。この期限を過ぎると延滞税がかかります。また、相続登記自体にも原則3年以内の申請義務があるため、申告と登記の両方の期限に注意しましょう。
 

早めの名義変更で安心を得よう

実家の名義を父のままにしておくと、相続登記の義務違反による最大10万円以下の過料、固定資産税の住宅用地特例を受けにくくなるリスク、将来の売却や管理での不便など、税金や法律上の不利益が生じる可能性があります。
 
名義変更には手間や費用がかかりますが、放置することで後から発生するコストやトラブルのほうが大きくなることもあります。相続人同士でよく話し合い、母や子ども、あるいは共有といった形で誰に名義を移すかを決めたうえで、期限内に登記を済ませることが大切です。
 
名義変更を適切に行うことで、安心して実家を守り、将来の税負担を軽減することができます。迷ったときには司法書士や税理士に相談することも有効です。早めの対応で大切な資産を守りましょう。
 

出典

東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう 所有者不明土地!~
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
法務局 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等
国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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