父の遺産分割時に、兄が父の生前に「1000万円」の住宅資金を受け取っていたことが発覚! 兄の相続分から差し引いても問題ないですか?

配信日: 2025.10.09
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父の遺産分割時に、兄が父の生前に「1000万円」の住宅資金を受け取っていたことが発覚! 兄の相続分から差し引いても問題ないですか?
亡くなった人から、生前に住宅資金の支援などの形で多額の財産を受け取っているケースもあるでしょう。こうした場合、相続財産の分配時に相続財産のみで計算するときと生前贈与分を考慮して計算するときとで、受け取れる金額が変わる場合があります。
 
今回は、亡くなった人から生前に財産を受け取っていた相続人がいた場合の、相続財産の計算方法や相続税との関係、トラブルを防ぐ対策などについてご紹介します。
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亡くなる前の贈与は特別受益として扱われる可能性がある

亡くなった人から、生前に財産を受け取っていると相続財産の受け取る金額が変わる可能性があります。相続人が複数人いる中で、一部の相続人だけ相続財産とは別に財産を受け取っていた場合、その利益は「特別受益」にあたります。
 
通常は、相続財産の金額を基に相続する金額の割合を決めますが、特別受益がある場合は、その金額を考慮したうえで相続財産の分配割合を決めましょう。
 
なお、特別受益の基準は民法で示されており、第903条第1項によると「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者」です。
 
つまり、亡くなった人から遺贈や生計を立てていくための資本として、あるいは結婚や養子縁組のためにお金を受け取っていた場合は、特別受益とみなされるでしょう。
 
ただし、結婚資金や生活費として受け取ったお金がすべて特別受益となるのではなく、相続財産の総額や、結婚資金・生活費の援助としては高すぎる金額でないかなど、さまざまな条件を基に判断されます。そのため、状況から見て適切な範囲の生活費の支援であれば、特別受益にはならない可能性があります。
 
金額だけで判断できるものではないため、特別受益になるか分からない場合は、法律の専門家などに相談してみるとよいでしょう。
 

特別受益があった場合の計算方法

特別受益があって法定相続分通りに相続した場合、相続する財産金額の計算方法は以下の通りです。
 

(1)相続財産と特別受益を合計する
(2)(1)の金額を法定相続分で分ける
(3)特別受益を受け取った人の相続分のみ、事前に受け取っていた特別受益の金額を(2)の金額から差し引く

 
例えば、法定相続人が長男と次男の2人のみで相続財産が5000万円、長男が父親の生前に1000万円の特別受益を受け取っていたとしましょう。この場合、法定相続分通りに分けると、長男と次男の受け取る金額は以下のようになります。
 

長男:(5000万円+1000万円)×2分の1-1000万円=2000万円
次男:(5000万円+1000万円)×2分の1=3000万円

 

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特別受益があったときの相続税の計算

特別受益は受け取れる財産の金額の計算には含めますが、相続税の計算には含めません。そのため、相続税額を計算するときは、本来の相続財産のみを対象にします。
 
なお、相続財産には亡くなった時期に応じて3~7年前の生前贈与の加算が必要です。また、贈与形式で相続時精算課税制度を選択していた場合も、相続税の計算に含めて考えます。
 
今回の計算では、これらの生前贈与や相続時精算課税制度は該当していないものとしています。
 
これらの前提を基に、特別受益の計算と同じ条件だとすると、相続財産は5000万円です。相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」なので、今回のケースでは4200万円が基礎控除となり、基礎控除を差し引いた800万円が課税対象となります。
 
法定相続人が複数人いる場合、相続税は課税対象となる金額を法定相続分で按分してから、各自の税額を求め、そのあとに合算して実際の相続割合で按分しなおします。
 
800万円を子ども2人で分けると400万円ずつです。相続税率は10%のため、相続税額は40万円ずつになります。相続財産のみに限ると長男が5分の2、次男が5分の3を相続しているため、実際に負担する相続税額は長男が32万円、次男が48万円です。
 

生前贈与でトラブルにならないための対策

相続人の誰かが特別受益を受け取っていると、相続する際の金額などでトラブルになるケースがあります。
 
もし特別受益にあたる贈与を親から受け取った場合は、遺言書で相続財産の割合をあらかじめ指定してもらうか、特別受益を相続財産の計算に加えないことを明記してもらいましょう。
 
相続財産の最低保障である遺留分を超えない範囲であれば、遺言で指定してもらうことで特別受益を考慮せずに相続財産を受け取れるでしょう。また、受け取れる金額が明確であるため、相続人同士のトラブルも防ぎやすいです。
 
遺言書があっても話がまとまらないときは、弁護士などの専門家に頼むことも選択肢のひとつです。
 

生前に受け取っていた住宅資金なら遺産の分配時に考慮して計算できると考えられる

亡くなった人から生前に相続人の誰かが財産を受け取っていた場合、特別受益があったとして相続財産の計算に含まれる場合があります。加算するときは、特別受益を受け取った人物はその金額分を除いた相続財産を受け取るでしょう。ただし、特別受益は相続税の計算には含みません。
 
また、特別受益によりトラブルが発生しそうな場合は、特別受益になり得る財産を受け取った時点で遺言書に相続財産の内訳を明記してもらうなどの対策が必要です。必要に応じて、専門家に相談するのもよいでしょう。
 

出典

e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五編 相続 第三章 相続の効力 第二節 相続分 第九百三条(特別受益者の相続分)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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