相続した実家を取り壊したら、年間「5万円」だった固定資産税が「30万円」に跳ね上がった! 空き家のまま放置してた方がよかったんでしょうか…?
なぜ「解体=税負担が軽くなる」のではなく、「解体したら税金が急増する」可能性があるのでしょうか。逆に、空き家として放置しておいた方がよかったのでしょうか。
この記事では、制度内容を整理しつつ、どのような判断が賢いかを解説します。
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目次
なぜ住宅を取り壊すと税金が跳ね上がるのか? 「住宅用地特例」の落とし穴
住宅が建っている土地には、「住宅用地特例」と呼ばれる固定資産税の軽減措置があります。
国土交通省によると、小規模住宅用地(敷地面積200平方メートル以下の部分)なら固定資産税の課税標準額が6分の1、一般住宅用地(200平方メートルを超える部分)でも3分の1に抑えられる仕組みです。これにより、住宅のある土地は税負担が大幅に軽くなっています。
しかし、この特例は「住宅が建っていること」が前提です。建物を取り壊して更地にすると、土地は「住宅用地」ではなくなり、特例の対象外になります。
その結果、軽減されていた分の税金が元に戻り、税額が数倍に膨れ上がることがあります。建物を解体すれば建物分の税はなくなりますが、土地側の増税効果の方が大きいケースでは、結果的に全体の税負担が増えるというわけです。
空き家放置VS解体――税負担・リスクを比較する
空き家をそのまま残すと、状況によっては住宅用地特例が継続される場合があります。居住用の建物が存在していれば軽減措置が適用され、税額は抑えられたままになります。そのため、表面上は放置した方が得のようにも見えます。
ただし、空き家を長期間放置して老朽化が進むと、倒壊の危険や衛生面の問題などが生じ、自治体から「管理不全空家」や「特定空家」に指定・勧告を受ける恐れがあります。
そうなると、住宅用地特例が外れ、税額は更地と同じ扱いになります。結果的に、解体しなくても税金が上がる可能性があるのです。また、空き家の維持には清掃や修繕などの費用や労力もかかり、建物の価値も時間とともに下がっていきます。
一方、建物を取り壊すと管理の手間は減り、土地を売却や活用に回しやすくなるというメリットがあります。しかし前述の通り、取り壊すことで住宅用地特例が外れるため、税負担は一気に上がります。
さらに解体費用が数百万円単位でかかることも多く、維持費削減だけでは帳消しにならないケースも考えられます。つまり、「放置」「解体」どちらにもメリットとリスクがあり、単純な損得では判断できません。
法改正で厳しくなる空き家政策
2023年12月の法改正で、「管理不全空家」という新しい区分が設けられました。これにより、今後「特定空家」になる恐れがある空き家を早い段階で行政が指導できる仕組みが整備されました。
所有者が管理を怠れば、自治体から助言や指導を受け、改善が見られなければ勧告や命令を受けることがあります。また前述の通り、勧告を受けた場合は、固定資産税の住宅用地特例が外れることもあります。
さらに、特定空家の勧告を受け、必要な措置を命じられてもなお空き家などの状態が改善されない場合には、行政代執行が行われる場合があります。その際にかかる費用は所有者に請求されることになります。
空き家を放置しておくことは、税金面だけでなく行政指導の対象になるリスクも高まっているのです。国や自治体は空き家対策を強化しており、「そのままにしておく」という選択肢はますます難しくなっているといえます。
判断ポイントと賢い選択肢:解体・売却・活用の比較と注意点
相続した実家をどうするかを考える際には、税金だけでなく、管理体制や将来の活用方法を含めて判断することが大切です。まずは、解体前後の税額を試算し、どの程度負担が増えるのかを確認しましょう。その上で、解体費用や売却の可能性、土地の活用計画などを比較検討する必要があります。
空き家を維持する場合は、定期的な清掃や点検を行い、「管理不全空家」に指定されないように注意します。活用の見込みがないなら、建物を取り壊して更地にし、売却や貸地に回すのもひとつの手です。自治体によっては、空き家解体後に一定期間の税軽減措置を設けていることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
解体で税負担が増えるのは事実ですが、放置した結果、「管理不全空家」や「特定空家」に指定されて同じように税額が上がる可能性もあります。
重要なのは、「どちらが得か」ではなく、「どちらがリスクを抑えられるか」です。空き家の管理や解体の判断は早めに行い、自治体や専門家に相談しながら進めるのが賢明です。
出典
国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー