父が残した遺産は、現金1500万円・自宅不動産3000万円の「合計4500万円」です。この場合、相続税の目安はどのくらいになるのでしょうか?
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
法定相続人と法定相続分
民法において、法定相続人の範囲や法定相続分が定められています。相続税の計算においては、この法定相続人を基礎として、この相続における「相続税の総額」を計算する課程が第一ステップとなります。
タイトルのケースを基に想定した、よくある3パターンについて確認したいと思います。
(1)配偶者(母)と子1人=法定相続人は2人 法定相続分は母2分の1、子1人2分の1
(2)配偶者(母)と子2人=法定相続人は3人 法定相続分は母2分の1、子2人4分の1ずつ
(3)子1人のみ=法定相続人は1人 子1人が全て相続
遺産に係る基礎控除
相続税の計算では、遺産の総額(4500万円)から以下の算式を基に計算した基礎控除を差し引いて課税遺産総額を算出します。
<遺産に係る基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の数>
この算式を用い、事例に基づいて基礎控除と課税遺産総額を計算すると、
(1)法定相続人2人で、基礎控除は4200万円、課税遺産総額は300万円
(2)法定相続人3人で、基礎控除は4800万円、課税遺産総額は0円
(3)法定相続人1人で、基礎控除は3600万円、課税遺産総額は900万円
この時点で、(2)母と子2人の場合は、遺産総額より基礎控除の金額が大きいため、課税遺産総額は0円となり、相続税も0円となります。
相続税の総額の計算
次に課税遺産総額を法定相続分で按分して、相続人それぞれの税額を算出し、それを合計した「相続税の総額」を算出します。
(1)母150万円・子150万円で按分、税率10%で母15万円・子15万円で、相続税の総額は合計30万円
(2)前述の通り、相続税額は0円
(3)子900万円で、相続税額は税率10%で90万円
この相続税の総額が、この相続に課税される相続税額の目安になります。
実際の遺産分割による按分で税額は変わる
相続人各人の実際の納付税額は、遺産(4500万円)を誰にどのように分割するかによって異なります。例えば、自宅不動産は相続人の共有財産として相続することも可能ですが、いずれか1人の相続人が相続した場合には、法定相続分とは異なる按分割合となるため、納付税額も変わることになります。
各人の納付税額を計算する際には、「相続税の総額」に実際に相続人等が相続した財産の按分割合を掛けて算出された税額から、税額控除を差し引いて計算することになります。
主な税額控除には、「未成年者控除」や「障害者控除」がありますが、特に影響が大きいのは、「配偶者の税額軽減」となります。これは、配偶者が取得した財産について、1億6000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額までは相続税はかからなくなります。
前述の事例(1)~(3)のいずれでも、仮に母が全て相続した場合には、相続税は一切かからなくなります。ただし、将来的に母が亡くなった時に子が相続する時点(二次相続)では、子に相続税の負担が生じる可能性が高いことを考慮しておく必要があります。
まとめ
以上の通り、相続税の計算の基本的な流れを確認しましたが、実際には遺言書があるため法定相続人以外に遺贈される場合、相続人が生前贈与を受けていた場合、相続人が欠格・排除に該当する場合、相続人が放棄した場合など、様々なケースが影響してきます。
また、自宅不動産の宅地、建物の評価については、一定のルールがあり、小規模宅地等の課税価格の計算の特例などもあるため、分からない場合には税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めいたします。
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー