現在50代で「持ち家+貯金2000万円」の資産があります。もし自分が亡くなった場合、内縁関係のパートナーに相続権はありますか?
特に「持ち家」と「貯金2000万円」といった明確な資産がある場合、相続の問題は避けて通れません。
本記事では、法律上の婚姻関係がない「内縁関係(事実婚)」のパートナーに相続権があるのか、そしてその場合にどんな対策が必要かをわかりやすく解説します。
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目次
内縁関係とは? 法律上の「配偶者」との違い
内縁関係とは、婚姻届を提出していないが、社会的には夫婦同様の共同生活を送っている関係を指します。つまり、法律婚と同じように生活費を分担し、互いを支え合っている状態です。
ただし、最大の違いは「戸籍上の配偶者ではない」という点です。そのため、法律上の権利・義務には明確な差があります。
たとえば、税法上の「配偶者控除」や社会保険上の「遺族年金」などは、基本的に内縁関係では受けられません(一定の条件で例外が認められる場合もあります)。
相続における内縁関係の扱い
結論から言うと、内縁関係のパートナーには法定相続権がありません。
民法では、相続人となれるのは次の3つの立場の人に限られます。
1.配偶者(戸籍上の結婚相手)
2.子ども(実子・養子)
3.直系尊属(父母・祖父母など)または兄弟姉妹
つまり、婚姻届を出していない内縁のパートナーは、相続の対象者にはならないのです。たとえ長年連れ添い、家計を支えてきたとしても、法律上は「他人」とみなされてしまいます。
相続人がいる場合の具体的なシナリオ
たとえば、あなたに子どもがいないが、両親や兄弟姉妹がいる場合を考えてみましょう。あなたが亡くなった時点で法的な婚姻関係がなければ、内縁のパートナーは一切相続できません。代わりに、あなたの親、または兄弟姉妹が法定相続人となります。
つまり、あなたが築いた「持ち家」や「貯金2000万円」は、全て血縁者に渡ることになります。内縁のパートナーは、その家から退去を求められる可能性すらあるのです。
では、内縁のパートナーに資産を残す方法は?
相続権がないからといって、完全に手だてがないわけではありません。内縁関係でもパートナーに財産を渡す方法はいくつかあります。
1.遺言書を作成する
最も確実なのは公正証書遺言の作成です。「自分の死後、内縁のパートナーに自宅と預貯金の一部を遺贈する」と明記すれば、法的効力を持ちます。公証人役場で作成するため、改ざんの心配もありません。
ただし、法定相続人がいる場合には「遺留分(最低限の取り分)」があるため、全財産をパートナーに渡すことはできません。この点は専門家に相談しながらバランスを取ることが大切です。
2.生命保険の活用
もうひとつの有効な手段が、生命保険金の受取人をパートナーに指定することです。保険金は「相続財産」ではなく、契約に基づく受取権として扱われます。そのため、相続人の反対を受けにくく、確実にパートナーの手に渡ります。
3.不動産の生前贈与
持ち家は、生前に共有名義にする、または贈与契約を結ぶ方法もあります。ただし、贈与税が発生する可能性があるため、慎重な設計が必要です。
内縁関係だからこそ、早めの備えを
内縁関係のパートナーには、残念ながら自動的な相続権はありません。しかし、遺言書や生命保険をうまく活用すれば、あなたの想いを形に残すことは可能です。
50代というのは、まだまだ元気で判断力もある時期。今のうちに専門家(行政書士・司法書士・弁護士など)と相談しながら、「もしものとき」に備えた相続設計・終活プランを整えておくことが、パートナーへの最大の思いやりとなるでしょう。
出典
金融庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー