兄は遠方に住んでいたため、私一人で母の介護を5年続けました。母の遺産「2000万円」は、介護をしなかった兄と平等に分けなければいけないのでしょうか?
今回は、親を介護していたか否かで相続金額が変わるのか、また遺産を多く受け取れる可能性がある制度などについてご紹介します。
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介護をしていたか否かで基本的に相続額に影響はない
親の介護をしていたとしても、自動的に相続額が増えるわけではありません。民法第877条では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められているためです。
子どもが親の介護をすることも、扶養義務のひとつとして判断される可能性があり、子どもが義務を果たしただけと判断されると、相続額は変わらないでしょう。民法第900条によると法定相続分の主な例は、以下の通りです。
・配偶者と子どもの場合:配偶者2分の1、子どもは2分の1を人数で分ける
・配偶者と両親の場合:配偶者3分の2、両親で3分の1を分ける
・配偶者と兄弟姉妹:配偶者4分の3、兄弟姉妹で4分の1を分ける
配偶者がおらず子どものみで相続する場合は、子どもの人数で遺産を均等に分けることになります。仮に2000万円の遺産があった場合で、子ども2人で相続すると、1000万円ずつです。
ただし、相続人間で合意をしておりお互いが納得しているのであれば、法定相続分とは異なる分配で相続することもできます。例えば、兄から「介護をしてもらった分多めに渡してもよい」と言われた場合は、兄が500万円、自分が1500万円という分け方も可能です。
また寄与分が認められたときも、遺産を多く受け取れる可能性があります。
寄与分とは
寄与分とは、民法第904条の2で定められている制度です。この制度では、亡くなった人の財産を維持したり増やしたりするのに特別に大きな貢献をしたと認められた人は、法定相続分より多い金額を受け取れます。
基本的に寄与分の金額は、相続人間の話し合いでの決定が必要です。民法では、話し合いで決められない場合は、家庭裁判所が請求によって「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める」と定められています。
具体的な計算式や金額は定められていないため、おおよその目安を知りたい場合は弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。しかし、寄与分は認められること自体、ハードルが高いといわれています。
寄与分が認められにくいといわれる理由
寄与分が認められるのは、「特別な貢献」をした場合です。この特別な貢献と認められるのは難しいといわれています。例えば、定期的に親の病院の送り迎えや毎日の食事の世話をしていた、というだけでは扶養義務の範囲内と判断される可能性があるためです。
実際に介護を毎日していたとしても、その証拠集めも難しいと考えられています。証拠がなければ、ほかの相続人の説得や裁判になった場合における証拠提出なども難しくなるでしょう。
さらに、寄与分自体がトラブルの元になりやすいのも理由のひとつです。話し合いだけではなかなか進まず、最終的に裁判にまで持ち越されるケースもあります。そうなると相続の手続きが進まないため、時間と手間が非常にかかることになります。
寄与分の話し合いを検討するときは、自分がほかの相続人を説得できるだけの証拠を持っているかをまず確認した方がよいでしょう。
寄与分が認められれば遺産を多くもらえる可能性はある
基本的に親の介護をしていても、受け取れる法定相続分の金額には影響がありません。ただし法定相続分通りではなく、相続人同士の話し合いのうえで、介護をしていた人が多くもらうことは可能です。
また、一人で介護をしていたという証拠がそろっていれば、寄与分が認められる可能性もあります。ただし、実際に寄与分を認めてもらうのは難しいとされているため、まずは通常の話し合いで、介護をしていた分多く受け取れないかを、兄に打診してみるとよいでしょう。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第四編 親族 第七章 扶養 第八百七十七条(扶養義務者)、第五編 相続 第三章 相続の効力 第二節 相続分 第九百条(法定相続分)、第九百四条の二(寄与分)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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