「実家の土地」と「預金300万円」を兄弟3人で相続する予定ですが話がまとまりません……。どのように決めれば“公平”になりますか?

配信日: 2025.10.23
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「実家の土地」と「預金300万円」を兄弟3人で相続する予定ですが話がまとまりません……。どのように決めれば“公平”になりますか?
被相続人の子(3兄弟)で相続財産を、「公平」に分割したいとのご依頼です。ところが相続の話がまとまらず、少々もめているようです。
 
本記事では、被相続人の遺産を3人の兄弟(相続人)が税務上・制度上の観点から「公平」に分ける方法を説明するとともに、その際に注意すべき点などを確認していきます。
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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相続財産から差し引けるもの

相続税の課税価格を算出する際、被相続人から相続財産から差し引けるものがあります。
 

(1)非課税財産

墓地、墓石、祭具、仏壇、仏具など、また、生命保険金や死亡退職金、弔慰金のうち、一定額については相続税が課税されません。今回の事例では、このような記載がないので考慮しません。
 

(2)債務控除

被相続人の借入金、未払いの医療費、税金など。こちらも記載がないので考慮しません。
 

(3)葬式費用

通夜、告別式、火葬、納骨費用など。
 
被相続人の葬式費用として、仮に被相続人の「預金300万円」から30万円支出したと想定すると、相続財産としての預金は270万円となります。
 

遺産に係る基礎控除

預金以外の相続財産は、「実家の土地」しかないようです。おそらく実家の建物自体は、築年数が古く、経年で評価額が0円であると想定されます。
 
一般的には、古い建物を取り壊さないままの土地と全くの更地では、取り壊し費用がかかるとの観点から更地のほうが評価額は高くなるでしょう。仮に、「実家の土地」の課税価格を6000万円と想定してみましょう。
 
相続税には、課税価格の合計額から控除できる基礎控除があります。
 

 基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数(3人)=4800万円
 課税価格は、6000万円+270万円=6270万円
 課税遺産総額は、6270万円-4800万円=1470万円

 
課税価格が基礎控除額より少ない場合には、相続税は課税されません。「公平」にとの観点からすると、課税遺産を3人で1470万円÷3人=490万円ずつ分割することになります。
 

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遺産分割の方法

遺産分割の方法には、以下の3種類があります。
 

(1)現物分割

遺産を現物のまま分割する方法です。現物分割できる預金270万円については、3人が90万円ずつ相続することが公平といえるでしょう。
 

(2)換価分割

遺産の全部または一部をお金に換えて、そのお金を分割する方法です。実家の土地について、換価分割として、土地を売却しお金に換えて、そのお金を3人で公平に分ける方法があります。ただし、土地が売却できることが条件です。
 
実家の所在(都市部、地方部)や状況によっては、容易に買い手が見つからないケースもあるでしょう。
 

(3)代償分割

例えば、長男が実家の土地を相続し、他の相続人(次男、三男)に自分の財産から現金などを支払う方法です。この場合には、長男に自分の財産から2人の弟に2000万円ずつ支払う資力があるかが問題となります。
 
また、公平に現物分割することが困難なものについては、共有財産として登記する方法もあり得ます。この場合には、一つの土地を3人で3分の1ずつの持ち分で所有権を共有することなり、その旨を所有権移転の登記をします。
 

遺産分割に影響を与える事項

3人の兄弟に対して、被相続人が生前に以下のような行為をしていると、遺産分割にも影響を及ぼします。
 

(1)相続時精算課税による贈与

親から子に贈与したときの贈与税を軽減し、その代わりに被相続人(親)の相続時に贈与分を相続財産として加算する制度です。3人の兄弟のうちいずれかが相続時精算課税による贈与を受けていると、遺産分割の金額にも影響が生じます。
 

(2)生前贈与加算

2024年1月1日以降の贈与について、被相続人が亡くなる前7年以内に行われた生前贈与分を相続財産に含めて相続税を計算する制度です。3人の兄弟のうちいずれかが生前贈与を受けていると、遺産分割の金額にも影響が生じます。
 

(3)みなし相続財産

今回の事例には記載はないですが、被相続人が契約者で3人の兄弟のいずれかが死亡保険を受け取る契約の場合、相続財産として加算されます。ただし、一部非課税として保険金額から差し引くことができます。被相続人の死後3年以内に受け取った死亡退職金についても同様です。
 

まとめ

本事例の場合、何が理由で話がまとまらないのかは不明です。こうした相続のトラブルのなかには、実家の土地を積極的に相続したくないという思いを持つ相続人がいるのかもしれません。
 
なぜなら土地を相続すると、たとえその土地を利用しなくても固定資産税(都市計画税を含む)や維持管理費用がかかるからです。また、ほったらかしで放置し続けると所有者としての責任が問われ、管理不全土地と認定されてしまうこともあり得ます。
 
もし、実家の土地を相続し、利用価値が乏しい場合などにはそのまま長期間放棄することなく、地元の自治体や不動産業、税理士などに相談することをお勧めいたします。
 

出典

国税庁 No.4152 相続税の計算
 
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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