一人暮らしの弟が急死し、賃貸オーナーから「補修費用15万円」を請求されました。契約書の提示が拒否され、敷金の有無が分かりません。全額支払うべきなのでしょうか。
さらに、敷金が預けられていたかどうかも分からず、契約書の内容も確認できない状態では、請求が妥当なのかどうかも判断がつきません。このような状況に直面したとき、どのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、賃貸契約における敷金や補修費の基本的な考え方から、遺族として請求にどう向き合うべきかについてわかりやすく解説します。
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敷金とは何か、補修費にどう関係しているのか
賃貸物件を借りるとき、借主がオーナーに支払う「敷金」は、主に家賃の滞納や退去時の修繕費などを担保するために預けるお金です。契約が終了し、部屋が返されたときには、この敷金から必要な費用を差し引き、残りが借主に返されるのが一般的です。
つまり、敷金は「借主が部屋を使っている間に生じた損害などに備えるための預かり金」ともいえます。
しかし、敷金を支払っていたかどうかが分からない状態では、修繕費の請求が敷金から差し引かれているのか、それとも別途支払いが必要なのかも曖昧になります。
本来であれば、契約書を見れば敷金の有無や金額、原状回復についての取り決めが記載されていますが、それが確認できないと、オーナーの請求内容が適正かどうかを判断するのが難しくなります。
また、修繕費がかかるとしても、すべての修繕が借主の責任というわけではありません。たとえば、壁紙の色あせや床のすり減りといった「経年劣化」や「通常使用による消耗」については、借主が費用を負担する必要はないとされています。これは国のガイドラインでも明記されている考え方です。
つまり、補修費を請求された場合には、まず「その損傷が誰の責任か」「敷金があるならそこから充てるべきではないか」「請求額は妥当か」を一つずつ確認することが大切です。
契約内容が確認できないときの対処法
補修費の請求を受けた際に、契約書が見つからず、敷金の有無が分からないという状況は、実際には珍しくありません。特に、亡くなった本人が一人で契約や支払いをしていた場合、家族や兄弟がその内容を把握していないことも多いでしょう。
このようなときにまずすべきことは、賃貸オーナーに対して、敷金が支払われていたかどうかの説明を求めることです。
通常は契約時の領収書や賃貸借契約書に記載がありますし、家賃と一緒に敷金を振り込んでいた場合は、通帳の記録を確認すれば分かることもあります。兄弟が使っていた銀行口座の入出金履歴を調べて、入居当初に敷金と思われる金額が支払われていないかを探してみるのも有効です。
オーナー側に説明を求めても明確な回答が得られず、請求額だけが提示されている場合には、安易に支払わず、まずは冷静に情報を集める姿勢が必要です。
また、補修が必要だと言われている箇所がどこなのか、その損傷の原因が何かも確認しましょう。たとえば、長年住んでいた場合の自然な傷みであれば、補修費を全額請求されるのは不当といえます。
もしオーナーが見積書や写真などの証拠を出してこないまま「15万円支払ってほしい」と言ってくるだけなら、その請求は正当とは言い難いものです。支払ってしまった後では取り戻すのが難しいため、納得できる情報がそろうまでは、支払いを保留するのが賢明です。
遺族としてできる対応と注意点
身内が急に亡くなると、日常生活の中では想定していなかった事務手続きや交渉に直面することになります。特に賃貸物件の退去に関しては、家族が代わりに契約解除や明け渡しの対応を行う必要があります。その際、残された家財の整理や鍵の返却、退去日の日程調整なども含め、賃貸人とのやり取りが発生します。
しかし、こうした手続きの中で、オーナーから一方的に高額な請求を受けることもあります。遺族の側が法律や契約内容に詳しくないことを見越して、強い言い方で支払いを求めてくるケースもあるため、冷静に対応することが何よりも重要です。
たとえば、「契約書がないから請求は正しい」と断定するような話し方をされたとしても、それだけで支払う義務があるとは限りません。そもそも契約内容が不明な状態で、費用の内訳も示されていないのなら、正当な請求とは言えません。さらに、兄弟が支払った敷金が残っていれば、それを補修費に充てるのが本来の流れです。
このような不透明な状況に直面したときには、賃貸トラブルに詳しい弁護士や消費生活センターに相談するのも一つの手です。遺族という立場でも、法的な権利はありますし、必要に応じて第三者の力を借りることで、無用な負担や損失を防ぐことができます。
請求に応じる前に、まず確認したいこと
賃貸オーナーから補修費15万円を請求されたとしても、その金額が正当かどうかは、敷金の有無や契約内容、補修の必要性と範囲によって大きく変わってきます。敷金が預けられていたのであれば、その中から差し引かれているかどうかを確認する必要がありますし、補修が本当に必要なのか、どこに原因があるのかを見極めることも重要です。
亡くなった兄弟の突然の出来事に加え、こうした事務的な対応をするのはとても大変なことですが、オーナーの請求にそのまま従ってしまうと、後で後悔することにもなりかねません。大切なのは、感情的にならず、支払いを急がず、根拠をひとつずつ確かめていくことです。
明確な根拠がなく、敷金の有無も分からないまま費用だけを請求されているなら、まずは「本当に支払うべきか」を考える時間をとるべきです。そして、必要に応じて専門機関に相談し、正当な形での対応を心がけましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー