亡くなった親の家を「相続放棄」しました。なのに固定資産税の督促状が… これは払わなければならないのでしょうか?
相続放棄をすれば被相続人の財産や借金など一切を引き継がないはずですが、税金の請求が届くのはなぜでしょうか。本記事では、法律と税金の両面からこの疑問を整理し、生活者の視点で対処のポイントを解説します。
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目次
原則として支払い義務はないが、「台帳課税主義」に注意
結論からいえば、相続放棄が家庭裁判所で受理されれば、固定資産税を支払う義務は原則としてなくなります。相続放棄をした人は、法律上「最初から相続人でない」とみなされるためです。
ただし、地方税法では「その年の1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている者」に課税すると定められています。これを「台帳課税主義」と呼びます。つまり、実際の登記や相続放棄の有無よりも、「台帳上で誰が所有者として登録されているか」が基準とされるのです。
そのため、相続放棄をしていても、1月1日時点で課税台帳に自分の名前が残っていた場合には、納税通知書が送られてくることがあります。相続放棄の手続きが遅れたり、放棄の受理が年をまたいだりした場合には特に注意が必要です。
相続放棄後も請求が届く理由と支払いリスク
相続放棄をしても通知が届く主な理由は、手続きと課税基準日のタイミングがずれているためです。例えば、前年の12月に申述しても家庭裁判所の受理が翌年2月であれば、1月1日時点では放棄が成立していないという扱いとなり、課税対象になってしまいます。
このような場合、督促状を無視して放置すると延滞金や差押えなどが発生し、金銭的負担が増える恐れがあります。法的には納税義務がないと主張できる場合でも、自治体は「登録者=納税義務者」として扱うため、速やかに相続放棄の受理証明書などを提出して対応することが重要です。
こうした状況では一時的に立て替えて支払い、後日、正式な手続き完了後に還付請求を行う、あるいは本来の納税義務者に求償する方法も考えられます。ただし、還付が必ず認められるとはかぎらないため、支払いの前に専門家へ相談するのが安全です。
対応の流れ:まずは「登録状況の確認」を
納税通知書が届いたら、まず市区町村役場に問い合わせて、課税台帳上の所有者として誰が登録されているかを確認しましょう。相続放棄の申述受理通知書や受理証明書などを提示すれば、課税台帳の登録を訂正してもらえる場合があります。
そのうえで、未納のままにしておくと延滞金が発生する可能性があるため、支払いを保留する場合でも自治体と協議しながら正式な判断を待つことが重要です。
さらに、相続放棄が受理されたら速やかに市区町村役場へ課税台帳の訂正申請を行い、翌年以降の課税を防ぐことが大切です。放棄後も台帳上に名義が残っていると、同じトラブルが毎年繰り返される恐れがあります。
よくある誤解と注意点
相続放棄をしたからといって、自動的に固定資産税の支払い義務が消滅するとはかぎりません。相続放棄の受理時期や課税台帳上の所有者名義の扱いによっては、自治体から納税通知が届くことがあります。
また、相続放棄後に不動産を売却したり、固定資産税などを自ら支払ったりすると、「相続を承認した」とみなされ、相続放棄の効力が失われる可能性があります。対応を誤ると、かえって不利益を招く恐れがあるため、対応に迷った場合は速やかに専門家へ相談することおすすめします。
正しい手続きでリスクと負担を減らそう
相続放棄をしたにもかかわらず、固定資産税の督促状が届くことがありますが、まずは落ち着いて現状を確認することが大切です。課税台帳上の登録状況や相続放棄の受理日、名義変更の有無を整理し、必要に応じて市区町村役場に課税台帳の登録訂正申請を行いましょう。
固定資産税の支払い義務がないにもかかわらず通知が届くのは、多くの場合、事務上のタイムラグが原因です。手続きの遅れにより延滞金や差押えなどの金銭的リスクが生じる前に、早めに確認と相談を行うことが最善の防衛策といえるでしょう。
出典
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
デジタル庁 e-GOV 法令検索 地方税法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー