父が残した実家(評価額2500万円)を相続することになりました。現金ではなく不動産の場合、税金はいくらくらいかかるのでしょうか?
本記事では、相続税の基本的な仕組みから不動産評価の方法、控除の種類、そして実際のシミュレーションまでを整理して解説します。
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相続税の基本ルールと課税の仕組み
相続税は、すべての遺産に課されるわけではありません。相続財産の合計額から「基礎控除額」を差し引いた残りに対して課税されます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
例えば、相続人が配偶者と子ども1人の2人の場合、控除額は4200万円となります。遺産の総額がこの金額以下であれば、相続税は発生しません。
課税の対象となる場合は、課税遺産総額を法定相続分で分け、それぞれに定められた税率(10~55%の累進税率)を掛けて算出します。さらに、配偶者控除などの特例があれば相続税課税評価額から控除されます。
つまり、相続税は単純な「遺産額×税率」ではなく、各種控除や特例を適用後、初めて実際の負担額が決まる仕組みです。
不動産の評価方法と見かけの価格との違い
不動産を相続する場合、評価の算定方法が重要になります。土地は「路線価方式」または「倍率方式」で評価され、建物は固定資産税評価額を基に計算されます。これらの評価額は市場価格による実勢価格より低くなることが一般的ですが、経済状況によっては評価額が市場価格を上回ることもあります。
さらに、居住用や事業用の土地については、「小規模宅地等の特例」が適用されることがあります。この特例を使うと、対象となる宅地の評価額を最大で80%減額することが可能です(特定居住用宅地なら330平方メートルまで)。
例えば、被相続人が生前に居住していた宅地を相続人が引き続き住む場合など、一定の条件を満たせば大幅な軽減が認められます。この特例が使えるかどうかで、最終的な相続税額は大きく変わることになります。
実家2500万円の相続を試算してみる
仮に父親が亡くなり、母親と子ども1人が相続人となるケースを考えます。相続財産は評価額2500万円の不動産のみで、その他の預貯金や債務はないものとします。この場合、基礎控除額は4200万円なので、遺産総額2500万円は控除の範囲内です。したがって、このケースでは相続税はかかりません。
ただし、これは「不動産以外に資産がない」といった前提での結果です。もし、預貯金や株式などが加われば遺産総額が増え、課税対象となる可能性があります。
また、小規模宅地等の特例の適用条件を満たさない場合には減額が受けられず、評価額がそのまま課税対象になることもあります。したがって、「評価額2500万円だから税金はかからない」とは一概に言えず、遺産の全体像と相続人の構成を踏まえた判断が必要です。
相続税がかかるかどうか、ケースごとに慎重に判断しよう
不動産を相続する場合、評価額だけで税額を判断するのは危険です。課税評価額の算定には、控除の内容や特例の有無、その他の財産との合算など、さまざまな要素が複雑に絡み合います。
まずは基礎控除の範囲内かどうかを確認し、次に小規模宅地等の特例が適用できるかをチェックすることが大切です。評価額の根拠や土地の区分なども、実際の税額に大きく影響します。
最終的には、税理士や不動産鑑定士など専門家の助言を得て、複数のシミュレーションを行うのが確実です。相続税の有無や金額は、遺産総額や法定相続人の状況などによって異なります。
実家を安心して受け継ぐためにも、自分のケースを客観的に把握し、必要に応じて専門家に相談しながら、最も有利な方法を選びましょう。
出典
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー