母が亡くなるまで「月5万円」の医療費を私が立て替えていましたが、兄弟は知らんぷりです。遺産分けの際に返してもらえますか?
本記事では、亡くなった親の医療費を立て替えていた場合に、相続時に返してもらえるのか、また相続税に影響があるのかなどを紹介します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
相続時に精算してもらうことになる
親の医療費を立て替えていた場合、相続時の精算は可能です。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で相続する財産額を決めることになります。このときに、立て替えた金額などを基に、相続する金額を話し合って決めるとよいでしょう。
ただし、精算にあたって、医療費を立て替えたという証拠が必要です。証拠がない状態で遺産を多く受け取ろうとすると、兄弟間でトラブルにつながる可能性があります。親の医療費を支払った時点で、領収書は必ず保管しておきましょう。
なお、領収書などの証拠があっても、ほかの相続人が納得せずに話し合いが終わらない場合もあります。話し合いで決まらないときは、弁護士などの専門家に仲介を依頼するとよいでしょう。専門家の視点から、遺産の分配内容についてアドバイスをもらえます。
それでも決まらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停も検討しましょう。ただし、遺産分割の調停は手間と時間がかかるため、できるだけ話し合いで解決したほうが相続人同士の負担も少なく済みます。
税金の計算も生前の医療費を支払っていた人で対応が変わる
亡くなった人の医療費を誰が支払っていたかで、相続税の計算時の対応は変わります。亡くなった人本人の預金口座から医療費が支払われていた場合は、相続税の計算には影響しません。なぜなら、相続をした時点の遺産は、すでに医療費が支払われたあとの金額のためです。
一方、子どもが自分の預金などから一時的に医療費を立て替えていた場合は、親が子どもに借金をしたとして債務控除が適用される可能性があります。
債務控除とは、相続税の計算をするときに該当する項目を相続財産の合計から差し引ける控除です。差し引ける項目としては、亡くなった本人が残した債務のほかに葬式費用も対象になります。
家族からの債務も対象になるため、子どもが医療費を立て替えている場合は、その金額分を差し引けるでしょう。
債務控除があるときの相続税の例
今回は、債務控除の有無による相続税の違いを比較します。条件は、以下の通りです。
・法定相続人数は子ども2人
・法定相続分通りに相続したとする
・相続財産は合計4500万円
・法定相続人以外に遺贈を受けた人などはいない
・相続財産の加算対象となる贈与もない
・立て替えていた医療費は月5万円を5年間で300万円とする
まず、相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」です。債務控除がない場合だと基礎控除額は4200万円となるため、基礎控除を差し引いた300万円が課税対象です。
相続税は、一度法定相続分通りに分割してそれぞれで税額を計算したあと、その税額を合計して実際の相続分に応じて分配します。
今回は子ども2人のみが相続するため、150万円ずつが最初の課税金額です。税率は10%のため15万円ずつ、合計30万円の相続税が課されます。今回は法定相続分通りに分けるため、実際の負担金額も15万円ずつです。
一方、300万円の債務控除が適用されると、相続財産の課税金額は「4500万円-300万円-4200万円」で0円となり、相続税は課されません。
領収書などがあれば相続時に精算できる可能性はある
親が医療費を払える状態で子どもが医療費を立て替えていた場合は、支払ったことを証明する領収書などの証拠があれば、相続時に精算できる可能性があります。ただし、必ずしも領収書だけでほかの相続人が納得するとはかぎりません。事前にしっかり説明する準備をしておき、必要に応じて専門家を依頼することも検討しましょう。
なお、子どもから親にお金を貸している形になるため、相続税の計算時には債務控除として相続財産から差し引けます。領収書は、債務控除をするための証拠としても必要になることから、忘れずに保管しておきましょう。
出典
国税庁 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
