疎遠だった父が亡くなりました。借金があったらしく、私に返済義務はあるのでしょうか?

配信日: 2025.11.27
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疎遠だった父が亡くなりました。借金があったらしく、私に返済義務はあるのでしょうか?
両親が離婚、家を出た父が再婚したというAさん。そんな父が亡くなった、という知らせがありました。資産と借金があるとのことですが、Aさんにどのような影響があるのでしょうか?
當舎緑

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

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日本の再婚率

厚生労働省の「令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)」によると、再婚件数の割合は夫17.9%、妻15.6%だそうです。10人に1人は再婚経験のあるご夫婦ということになりますから、今回のようなケースも珍しくなく、再婚後の親と疎遠になってしまうことはよくあることでしょう。
 
しかし、疎遠になったからといって、親子の縁は切れません。今回は、再婚後に疎遠になってしまった親の相続について考えてみましょう。
 

相続の基本

相続は、必ず誰にでも起こり得ます。人が死ぬときには、財産を使い切って死ぬことはできませんから、いくらかの財産が残されます。ただ、この相続財産といわれるものには「プラス」と「マイナス」の財産どちらも含まれます。
 
マイナスの財産については、自分がした借金でないのに、相続人に返済義務があるという点が相続人にとって理不尽に感じるでしょうが、これは相続の基本です。
 
ただ、再婚後の親とたとえ連絡を取り合っていても、「財産がいくらあるか」「借金はあるのか」など、具体的に親子でお金の話ができるというケースはほとんどないでしょう。救済措置はもちろんあるのですが、「疎遠だから」といって、何もしないでいると大変なことになる場合もある、ということはしっかりと理解しておきたいものです。
 

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相続するためには3つの選択がある

相続人は、相続財産を自動的に相続できるわけではありません。相続するためには、どんな方法があるのか、以下の3つの選択肢を見てみましょう。
 

(1)単純承認

プラスとマイナスの財産を含めて、すべての財産をそのまま相続する方法です。この単純承認は、借金があるケース、疎遠で財産が把握しきれていないケースの場合にはおすすめはできません。
 
葬式や法事のとき、親族で集まった際に、形見分けや費用の負担などを話し合うことも多いかもしれませんが、注意していただきたい点があります。「単純承認します」との希望を表明しなくても、勝手に遺産を処分したり、金融機関で本人の預金を引き出したりしてしまうと、単純承認だと「みなされる」ことがあります。
 

(2)限定承認

死亡した方の相続財産のすべてが分からない場合や、マイナスの財産があるかもしれない場合に、プラスの財産の「範囲内」で借金を返済する方法、つまり、プラスの財産は相続しますが、もしマイナスの財産があっても、プラスの財産以上にマイナスの財産は返済する必要がない方法です。
 
注意点としては、相続人全員が「限定承認をします」と選択する必要があることです。相続人の思惑がそれぞれ異なる場合には、選択できません。
 

(3)相続放棄

3つ目の選択肢である「相続放棄」は、知っている方が多い方法です。簡単にできると考えている方も多いかもしれませんが、注意点があります。
 
それは相続財産、いわゆるマイナスの財産はもちろん、プラスの財産も一切相続しない選択肢です。
 
相続放棄を選択するよくあるケースとして、「長男などに手続きなど一切合切お任せするからすべてやって。私は放棄するから」などと親族間で話し合って、手続き自体を「終わった」と考えている相続人がいますが、それで相続放棄したことにはなりません。相続放棄の手続きは、放棄をする相続人が自分自身で申し出をする必要があります。
 
具体的な方法としては、家庭裁判所へ申述書を提出します。相続放棄は他の相続人と関係なく「個人」でできますので、相続人全員の意見を一致させる必要はありません。
 
ただし、申し出には期限があります。「相続開始を知ったとき」から3ヶ月以内が期限ですので、「知ったとき」がいつなのかによって、放棄ができる期限が過ぎてしまっているときには、上記2つのいずれかしか選択できないケースもあります。
 
再婚後の親と疎遠になってしまったことで、お通夜お葬式の案内が届かず、「家族葬が終了しました。」と郵便物が届くだけのときには、期限を把握しておくことが大切です。
 

被相続人に借金があるときに相続人がとるべき手段とは

冒頭の相談者のように、疎遠な親に借金があると聞かされても、すぐに冷静な対応ができないのは当然です。そのようなときには弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談してみましょう。
 
専門家への相談をわざわざしなくても、ネットで調べることもできますし、お金をかける必要はあるのか悩むこともあるでしょう。借金がある相続なんてお金をかけてまでするべきなのか、「疎遠な親」だからこその悩みもあると思われます。
 
しかし、疎遠だからこそカードローン、クレジットカードの債務、保証人になっているかの有無など借金の詳細は確認すべきです。信用情報機関への開示請求で、債務などの支払い状況などの信用情報を確認できますが、個人でどこまでできるのか、個別の状況に応じた専門家の意見は貴重なものです(参考:株式会社日本信用情報機構 JICC)。
 
冒頭の相談者のケースに対する回答は、「疎遠な親だからといって、子である相続人に返済義務がある」ということになります。ただし、「何もしなければ」という条件付きです。
 
もし、自分が相続放棄をしたとしても、他の相続人に返済義務が発生してしまう可能性もあります。きょうだいなど、他に相続人がいるときには、相続が発生したときの流れについてすり合わせをしておきましょう。
 

出典

厚生労働省 令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
株式会社日本信用情報機構(JICC) 開示を申し込む
 
執筆者 : 當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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