長年母の介護をしてきましたが、兄は遠方に住んでいて関わっていません。それでも相続は半々…。介護した分を考慮してもらうにはどうしたらいい?
実際、介護という時間的・身体的・精神的なコストはお金の話だけでは測りきれませんが、相続の場面では「介護した分」をどのようにお金・財産の割合に反映させるかが重要な問題になります。
本記事では、介護の貢献をどのように相続の取り分へ反映させられるのか、法的な制度背景や金銭的な影響、実務の手順を整理し、考えるべきポイントを分析します。
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制度の概要と「寄与分」とは何か
寄与分とは、介護など被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をした相続人が法定相続分以上の取り分を請求できる制度です。相続人のなかで、通常の義務や期待を超えた無償かつ継続的な貢献が認められた場合に適用されます。
ここで重要なのは、「親の介護は子の義務」とされる範囲を超える特別な貢献かどうか、という点です。例えば、介護サービスを利用せずに長期間にわたり無償で介護を担ったことで施設費用や介護サービス費用の発生を防ぎ、被相続人の財産の減少を抑えた事実があれば寄与分認定のポイントとなります。
寄与分は相続人同士の話し合いで決めることもできますが、合意に至らない場合は家庭裁判所の調停や審判で判断されます。
介護の貢献をお金に換算して「可視化」する
寄与分を主張するには、被相続人の財産維持への貢献度を客観的に示す必要があります。そのためには、介護にかかった費用や時間・労力を具体的に整理しておくことが重要です。
まず、費用の面では、もし介護をしていなかったら発生していたであろう費用を見積もっておくと説得力が増します。例えば、施設入居費や訪問介護サービス費、デイサービス利用料などです。また、自分が実際に支払った介護用品購入費や通院送迎の交通費については、領収書や通帳履歴を保管しておくことも有効です。
さらに、介護に費やした時間や労力も重要な評価材料です。仕事をセーブせざるを得なかった、休日の多くを介護に充てていたなど、自身の生活に影響を及ぼした状況は寄与分の判断材料になり得ます。介護日誌や訪問記録、母親の要介護認定結果などがあれば、より客観的な裏付けになります。
このように、「介護サービスにかかる費用」「自分が支払った出費」「介護に費やした時間」の観点で貢献を可視化することで、寄与分の主張がより説得力を持つようになります。
兄弟との話し合いの進め方と手続きの流れ
兄弟間で介護への関与に差がある場合は、感情的な対立が生じやすく話し合いが難航することがあります。そのため、個人的な思いではなく、事実や数字に基づいて冷静に伝えることが大切です。
まずは遺産分割協議の場で、介護の実態とお金・時間にかかる負担を丁寧に説明し、寄与分の考慮を求めます。この際、主張を裏付ける記録や資料を準備しておくと、他の相続人にも理解してもらいやすくなります。
協議でまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。調停では感情的な対立を避け、第三者の立場から寄与分の有無や程度について話し合いを行い、合意形成を目指します。調停でも合意に至らなければ、最終的には裁判所の審判で寄与分の額が決められます。
重要なのは、相手に介護をしていないことを責めるのではなく、自分がどれだけ財産を守る行動をとってきたかを明確に説明することです。感情的な対立を避け、事実を冷静に示すことで、納得のいく結果につながりやすくなります。
自分の貢献を正当に反映してもらおう
介護や財産管理などの貢献は、心身だけでなくお金の面でも大きく影響します。
これらの貢献を相続に反映させるには、「寄与分」の制度を理解し、介護の実態を証明できる資料を整えておくことが何よりも重要です。兄弟間で関与に差がある場合は、早めに情報を整理し、必要に応じて専門家の助けを借りながら、納得のいく相続を目指しましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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