父に多額の借金があるため相続放棄しましたが、後日口座に30万円入っていることが分かりました。相続放棄済みでも引き出せますか?

配信日: 2025.11.29
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父に多額の借金があるため相続放棄しましたが、後日口座に30万円入っていることが分かりました。相続放棄済みでも引き出せますか?
親の借金を理由に相続放棄する場合、後から銀行口座に残高が見つかるケースがあるかもしれません。たとえ少額であっても相続放棄後の扱い方を誤ると、結果的に「相続を承認した」とみなされる可能性があります。
 
本記事では、相続放棄の法的な仕組みや借金と預貯金の優先関係、相続放棄後に財産が見つかった場合の正しい対応を解説します。
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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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相続放棄後は「相続人ではなかった」扱いになる

相続放棄は家庭裁判所で申述が受理されることで効力が発生し(民法第938条)、法的には相続開始時にさかのぼって「初めから相続人ではなかった」とみなされます(民法第939条)。したがって、相続放棄をした人はプラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぐことができません。
 
このため、相続放棄済みの人が故人の銀行口座から30万円を引き出すことは、原則として認められません。預貯金の引き出しは相続財産を処分する行為とみなされ、相続放棄をしたにもかかわらず「相続を承認した」と判断される可能性が生じます。
 
こうした行為が確認されると、民法第921条3号により相続を承認したものと扱われ、結果的に相続人が負債を含むすべての財産を引き継ぐ「単純承認」とみなされるリスクがあります。したがって、少額であっても金額にかかわらず、相続財産を勝手に動かすことは避けなければなりません。
 

借金と預貯金の関係

相続では、プラスの財産とマイナスの財産を分けて受け取ることはできません。
 
預貯金や不動産などの財産と、借金などの負債はまとめて一つの相続財産として扱われ、どちらか一方だけを選んで承継することはできない仕組みになっています。そのため、借金が多いから相続放棄をした場合、後から預貯金が見つかっても、その部分だけ受け取ることはできません。
 
例えば、借金が数百万円あり、後から30万円の預貯金が見つかった場合でも、全体として負債超過であることに変わりはありません。多くの人は、「少しでも財産があるなら受け取ってもよいのでは」と考えがちですが、民法上は相続放棄を選んだ以上、部分的に財産を受け取ることはできません。
 
また、相続放棄は借金だけを拒否し、預貯金だけを受け取ることが認められていません。借金の負担を避けるために相続放棄をしたのであれば、後から出てきた預貯金についても触れず、一切の相続権を放棄することが必要となります。
 

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相続放棄後に財産が見つかった場合の正しい対応

相続放棄の手続きが終わった後に預貯金などが見つかった場合、相続放棄者が取るべき適切な対応は決まった流れがあります。相続放棄後に財産が見つかることは珍しくないため、冷静に対応するためにも以下のような手順を理解しておくことが重要です。
 
1. 口座の引き出しや解約手続きを一切行わない
まず、相続放棄者は預金を引き出しや解約手続きを一切行わないことが肝心です。そうした行為は単純承認とみなされ、相続放棄の効力が失われる可能性があります。
 
2. 銀行へ相続放棄の事実を伝える
金融機関に相続放棄の受理証明書などの書類を提出し、相続放棄の事実を正式に伝えます。銀行はこれを確認し、次順位の相続人へ手続きの案内を行います。
 
3. 遺言書がない場合は次順位の相続人へ承継される
配偶者がいる場合は、相続放棄がなければ常に相続人となります。被相続人に配偶者がいなければ子となりますが、子が相続放棄すると次に父母、その後兄弟姉妹へと相続権が移動します。
 
次順位の相続人が相続をするか、放棄するかを判断します。相続人全員が放棄した場合は、「相続財産管理人」が選任され、財産は債権者への弁済や清算に充てられます。
 

相続放棄後に財産を見つけても自分で処分しないようにしよう

相続放棄は、相続開始時までさかのぼって相続人ではなかったという扱われる制度のため、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も、一切引き継ぐことはありません。
 
そのため、たとえ30万円と少額の預貯金であっても引き出すなどの処分を行うと、相続を承認したとみなされる可能性があります。「少額だから問題ない」と考えると、結果的に借金まで引き継ぐことになりかねません。
 
相続放棄後に財産が見つかった場合は、口座には一切触れず、銀行や家庭裁判所に相談しながら適切な手続きを進めましょう。
 

出典

デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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