亡くなった父から「4000万円」入った“NISA口座”を相続したら、相続税がかかりました。NISAは非課税じゃなかったのでしょうか?
今回は、NISA口座を相続しても非課税にならない理由や相続する際の注意点などについてご紹介します。
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NISA口座は相続税の課税対象になる
NISAを利用して得た利益は、最大1800万円まで非課税で保有できます。しかし、本人が亡くなり、保有していた利益を相続人が相続しても、非課税にはなりません。NISAの利益が非課税となるのは、あくまでも本人が運用して得た利益に限られるためです。
また、亡くなった人が使用していたNISA口座は、そのまま相続人のNISA口座として引き継げません。
例えば、亡くなった人が使っていたNISA口座を相続したとき、保有していた金融商品はNISAの対象ではなくなり、通常の金融商品を相続したと判断されます。そのため、亡くなった人が保有していたNISA口座内にある金融商品の金額を相続したとして、相続税の計算が必要です。
相続税の計算方法
NISA口座を相続した際は、ほかの遺産と合計してから相続税を計算する必要があります。国税庁によると、相続税の計算手順は以下の通りです。
(1)現金やNISA口座、不動産など亡くなった人が保有していたすべての財産を合計する
(2)(1)の金額から負債や葬式費用、非課税財産といったマイナスの財産を差し引く
(3)(2)の金額に相続税の課税対象となる贈与があれば加算する
(4)(3)の金額から基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人数」を差し引いて課税遺産総額を求める
(5)課税遺産総額を法定相続分通りに相続したと仮定して各相続人の相続税額を求める
(6)(5)の金額を合計する
(7)合計した相続税額を実際に相続した割合で分配する
(8)各相続人で適用される控除や加算があれば適用する
計算方法を基に、以下の条件で相続税額を求めてみましょう。
・評価額1800万円のNISA口座と評価額2200万円の通常証券口座を相続
・法定相続人は子ども一人のみ
・遺贈を受けた人はいない
・マイナスの財産は考慮しない
まず、遺産総額を合計すると4000万円です。また、今回のケースだと基礎控除は3600万円になります。条件を基にすると、課税遺産総額は400万円です。
今回は子ども一人のみのため、相続税は全額を子どもが負担します。400万円のとき、相続税率は10%のため、相続税額は40万円です。
NISA口座を相続するときの注意点
NISA口座を相続する際は、まず通常の金融商品の相続手続きをします。NISA口座をそのまま別のNISA口座へは移行できないためです。この際、亡くなった人のNISA口座は通常の特定口座や一般口座扱いとなります。
亡くなった日以降に受け取った配当金などは非課税の対象外となり、通常どおり課税されます。ただし、評価額が変動しただけであれば課税は生じず、課税されるのは相続人が売却して利益が確定した時点です。課税対象となった場合は、金額によっては確定申告を行う必要があるため注意しましょう。
また、NISA口座を相続して自身の口座に移行するためには、亡くなった人と同じ金融機関の口座を保有している必要があります。持っていない場合は、移行手続きの前に同じ金融機関で自身の口座開設を行いましょう。
NISA口座が非課税なのは運用中の利益に対してのみ
NISA口座は、生涯で最大1800万円までの投資ができ、その範囲内であれば配当金や売却益などの運用益が非課税となります。しかし、この口座を相続すると、相続税が課される可能性がある点に留意しておきましょう。通常の金融商品を相続したときと同様に、評価額を基に税額を計算します。
なお、NISA口座を相続した後に自身の口座に移す場合は、NISA口座と同じ金融機関で口座を開設しておきましょう。同じ金融機関でないと移行はできないため、先に開設しておくとその後の手続きがスムーズに進みやすくなります。
出典
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る NISAのポイント
国税庁 措置法第37条の14《非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税》関係
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー