兄弟の中で一番“近場に住んでいるから”と、親の介護をすべて任されています。相続時にはほかの兄弟よりも「遺産」を多く分けてもらえるでしょうか?

配信日: 2025.12.07
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兄弟の中で一番“近場に住んでいるから”と、親の介護をすべて任されています。相続時にはほかの兄弟よりも「遺産」を多く分けてもらえるでしょうか?
兄弟姉妹のなかで自分だけが親の近くに住んでいるという理由から、日常的な介護や通院の付き添い、生活支援の多くを任されるケースもあるでしょう。そのような状況では心身の負担だけでなく、交通費などの経済的な負担も生じます。では、親の介護を長年担ってきた場合、相続の際には他の兄弟より多く遺産を受け取れるのでしょうか。
 
この記事では、民法の規定をもとに、介護と相続の関係を整理します。
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一般的に親の介護は「扶養義務」に該当するため、原則として相続分は変わらない

まず、介護を行ったというだけでは相続分が自動的に増えるわけではありません。
 
民法第877条では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められており、親の生活を支える行為は法律上の扶養義務の一環と位置づけられます。扶養義務には生活費などの援助だけでなく、日常生活の介助や介護も含まれると解されているため、家族が親の介護を行っても、ただちに「特別の貢献」と評価されにくいのが実務上の傾向です。
 
そのため、兄弟の中で1人だけが長期間介護を担っていたとしても、それが扶養義務の範囲内と評価される限り、遺産分割で他の相続人より相続分が多くなることは通常ありません。多くの場合、家族内の役割分担として扱われ、相続割合の調整につながらないケースが一般的です。
 
誤解されやすい点ですが、介護にかけた労力や時間、費用といった負担の大きさが、そのまま自動的に相続分の増減に反映される仕組みにはなっていないのです。
 
親の介護が、扶養義務の範囲を超え、次に解説する「寄与分」として認められた場合には相続分が増える可能性がありますが、扶養義務そのものは相続割合を直接左右する要素とはされていない点が重要です。
 

例外の「寄与分」:条件を満たせば相続分が増える可能性がある

前述の通り、親の介護を1人で担っていたというだけでは、相続分が自動的に増えるわけではありません。
 
ただし例外として、民法第904条の2で定める「寄与分」が認められれば、他の相続人より多くの遺産を受け取れる可能性があります。寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持や増加に「特別の貢献」をした者がいる場合、その貢献を相続分に反映させる制度です。
 
介護については、専門職員を雇えば相当の費用がかかったであろう程度の負担を長期間にわたって担い、かつ他の兄弟姉妹に代わって主体的に実施していたと認められる場合などには、通常の扶養義務を超えた特別な寄与として評価されるケースがあります。
 
ただし、寄与分の認定は容易ではなく、介護の内容や期間、経済的効果などを客観的に示す資料が重要になります。
 

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寄与分を主張するにはどうすればよいか

寄与分を主張する際は、まず相続人間の話し合い(遺産分割協議)で合意を目指し、難しい場合には家庭裁判所で調停や審判を申し立てることになります。裁判所では、介護の実態や他の兄弟姉妹の関与状況、在宅介護に要した費用や時間、被相続人の財産の維持・増加への寄与度などを総合的に判断します。
 
このため、介護を担っている人は、日々の介護の内容や所要時間、費用負担などを記録しておくことが、将来寄与分を主張するための重要な準備になります。領収書、日記、メール、タイムカードなど、客観的な証拠を残しておくと有利でしょう。
 

まとめ

親の介護を1人で担っていても、民法第877条に基づく扶養義務の範囲内とみなされる場合には、相続分が自動的に増えるわけではありません。介護の負担が大きい場合でも、相続で必ずしも優遇されるとは限らない点に注意が必要です。
 
ただし、通常の扶養義務を超える特別な貢献と評価されれば、民法第904条の2に基づく「寄与分」として相続分が増える可能性があります。
 
介護の負担に不公平さを感じる場合には、介護内容の記録を残し、必要に応じて早めに専門家へ相談することが、将来の相続に備えるうえで有効です。制度の仕組みを理解しつつ、家族間で納得感のある相続を目指すことが大切でしょう。
 

出典

e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第四編 親族 第七章 扶養 第八百七十七条(扶養義務者)、第五編 相続 第三章 相続の効力 第二節 相続分 第九百四条の二(寄与分)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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