児童手当をすべて子どもの口座で管理し、残高が“150万円”ほどあります。大学進学のときにそのまま渡すと“贈与”とみなされるのでしょうか?
中には「子どもの将来のために」と、支給された児童手当を子ども名義の口座で管理し続け、100万円以上の残高があるという家庭もあるでしょう。
しかし、このお金を大学進学などのタイミングでそのまま子どもへ渡す場合、税務上“贈与”とみなされる可能性はあるのでしょうか。本記事では児童手当の制度上の取り扱いと名義預金の問題、贈与と判断されるケースについて整理します。
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目次
児童手当は「親名義の口座」に入金されるのが原則
児童手当は、法律上「手当を受給する者=親など児童を養育している者」に支給される制度です。受給者は市区町村に申請を行い、原則として受給者名義の預金口座に振り込まれる仕組みになっています。
これは制度が“親などが子どもを監護・養育するための給付”として設計されているためであり、子ども自身に支給されるものではありません。
そのため、本来の制度設計としては、児童手当を親名義の口座で管理し、そのお金を養育費として適宜支出していくことが想定されています。ところが実際には今回のケースのように、教育費や将来のためとして子ども名義の口座に移して管理する家庭もあるようです。
子ども名義の口座で管理すると「名義預金」とみなされる可能性がある
児童手当を子ども名義の銀行口座に入れて管理した場合、そのお金が誰のものかが問題になります。親が管理し、親が自由に使える状態であれば、たとえ子ども名義の口座であっても実質的には「親のお金」と判断される可能性があり、税務上は“名義預金”として扱われやすくなります。
名義預金とは、名義は子どもでも、実質的に親が管理・運用している預金のことを指します。子ども名義の口座を作っても、通帳やキャッシュカードを親が保管し、子どもが口座の存在を知らない、あるいは自由に引き出せない場合には、「親の財産」と扱われるのが一般的です。
この場合、大学進学のタイミングで子どもに児童手当の残高150万円が入った口座の通帳やキャッシュカードを渡すと、それは“子どもに対する財産移転”と評価され、その時点で贈与が成立する可能性があります。
子どもが口座の存在を知らなければ「贈与」と判断されやすい理由
贈与とは、「あげる側の意思表示」と「もらう側の認識」がそろったときに成立するものです。例えば子どもが自分名義の口座やそこにある預金の存在を理解しておらず、管理もしていない場合、その預金は子どもが“もともと持っていた財産”とはみなされません。
そのため、親が「大学進学のために使って」と口座の通帳やキャッシュカードを渡した場合、150万円が“新たに子どもへ贈られた財産”と評価される可能性があります。年間110万円を超える贈与については基礎控除を超えるため、贈与税の課税対象となる可能性があります。
つまり、児童手当を子ども名義の口座で管理していても、子どもが「このお金は自分のものである」と理解し管理できていない場合には名義預金とみなされ、口座の管理を子どもに移すタイミングで贈与が成立し、贈与税の課税リスクが生じます。
児童手当を子どもへ渡すときの注意点――贈与とみなされないために
児童手当が本来親の財産であることを踏まえると、大学入学費用や教育費として支出する場合は「親が子へ支払う養育費」として扱われるため、贈与税の対象となることは通常ありません。
教育費は生活に必要な支出として位置づけられ、国税庁によれば、通常必要と認められる範囲内で、必要となる都度直接教育費に充てるためのものであれば、贈与税の非課税枠として認められます。
しかし、「教育費として使うのではなく、まとまった資金として子どもへ渡す」場合は話が変わります。その場合は贈与と評価される可能性があるため、渡し方や金額に注意することが大切です。
あくまで教育目的の支払いであれば、親名義の口座から直接大学の授業料や入学金を支払うなど、「親が子どものために支出した」という形を明確にしておくことが望ましいといえます。
まとめ
児童手当は法律上「児童を養育している者」に支給される制度であり、親など受給者名義の口座で管理することが原則です。
子ども名義の口座で管理した場合であっても、実質的に親が管理しているなら名義預金として扱われ、そのお金を大学進学時などのタイミングに渡すと、150万円が“贈与”と評価される可能性があります。特に子どもが口座の存在を知らなかった場合には、その時点で贈与とみなされる可能性が高まります。
教育費として親が直接支払う分には基本的に贈与税の心配はありませんが、まとまった金額を「財産」として子どもに移転する場合には、贈与と判断されることがあります。心配な場合は税理士など専門家に相談し、渡し方に問題がないか確認しておくと安心です。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
