身寄りがいない自分が孤独死したら、片づけや葬儀費用は誰が負担するの……? 生前にできる準備や用意する費用目安を教えてください。
そのうち自宅にて一人で亡くなった高齢者は3.6%で、身寄りがない方は人ごとではすまされません。本記事では、孤独死したときにかかる費用や生前に準備できることについて解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
孤独死後にかかる費用
孤独死後にかかる費用は、基本的に亡くなった方の財産から支払われます。しかしながら、それが不可能な場合には、法定相続人や連帯保証人などが負担することになります。
孤独死で亡くなった際にかかる費用としては、特殊清掃費用・遺品整理費用と葬儀費用の2つが発生します。以下、それぞれについて詳しく確認します。
1. 特殊清掃費用・遺品整理費用
(1)特殊清掃費用
亡くなった方の遺体の腐敗による悪臭や体液や血液などの汚染を除去するために特殊な清掃を行う必要があります。
発見が遅れた場合には、特殊清掃や原状回復に高額な費用がかかることがあります。一般的に1Rから1Kで3~30万円程度、1DK~3LDKで7~50万円程度が相場のようですが、孤独死となった現場の状況によって費用が大きく異なります。
(2)遺品整理費用
亡くなったあとの遺品を整理する必要があります。これも、(1)特殊清掃費用同様、現場の状況によって大きく異なります。目安としては、1R・1Kで2~12万円程度、1LDKで6~23万円程度、2LDKで10~42万円程度となっています。生前に正確な費用が知りたい場合には、業者から見積もりを取るとよいでしょう。
2. 葬儀費用
身寄りがいない方が亡くなった場合、費用は故人の財産から支払われるのが基本です。しかし、財産がなければ自治体が負担します。その場合には、自治体が火葬のみを行います。また、亡くなった方が、生活保護受給者など経済的に困難な場合は、葬儀費用の一部を自治体から「葬祭扶助」として受け取れる制度もあります。
なお、葬儀には、一般葬、家族葬、一日葬、直葬などの形式によって、費用が大きく異なります。どのような葬儀を行いたいかによって、準備する費用も異なります。
株式会社鎌倉新書(東京都中央区)が運営するサイト「いい葬儀」が2024年に公表した「第6回お葬式に関する全国調査」(調査期間:2024年3月1日~4日、有効回答数:2000件)によると、葬儀にかかる費用の平均総額は約119万円(前回約111万円)であるとの調査結果もあります。
生前にできる準備
ご自身の意思を反映させ、周囲に迷惑をかけないようにするために生前にできる主な準備について解説します。
1. 死後事務委任契約
ご自身の亡くなったあとの事務手続きを、第三者に委任することができる契約があります。この契約を締結することで、次のような事務手続きが行われます。
契約については、信頼できる友人や知人とも可能ですが、法的な問題やトラブルなどを未然に防ぐ観点からは、弁護士や司法書士、行政書士をいった士業や高齢者の支援サービスなどを提供する団体の専門家へ依頼するほうが適切に対応してもらえるでしょう。
費用は、委任する内容によって大きく異なりますが、100~300万円ほどが相場のようです。
(1)葬儀・火葬・埋葬
(2)埋葬後のお墓の管理
(3)住居の明け渡しや残置物の処分
(4)親族等関係者への連絡
(5)行政機関の連絡 など
2. 見守り契約・任意後継契約
死後の対策だけでなく、生前対策も行うとよいでしょう。具体的には、見守り契約と任意後継契約があります。
見守り契約とは、高齢になったときのことを考え、弁護士などの専門家が定期的な連絡や訪問をすることで、本人の健康や生活の状況を確認してもらえる契約です。
加えて、認知症などで判断能力が低下した場合に、財産管理や生活に関する手続きを代理してもらうことができる任意後見契約もセットで契約することが多いようです。
3. 遺言書「エンディングノート」の作成
生前や死後のことは、見守り契約・任意後継契約や死後事務委託契約をすれば対応できますが、ご自身の思いや財産の使い道などがしっかりと引き継がれるようにすることも大切です。
そのためには、遺言書で、財産を特定の人(お世話になった友人、団体など)に遺したい場合は作成します。作成しない場合、財産は最終的に国庫に帰属することとなります。
また、財産状況、連絡先、葬儀や医療に関する希望、大切なものの情報などをエンディングノートとして作成しておき、死後事務委任契約をスムーズに進めるための準備として役立つようにするのも重要です。
まとめ
身寄りがいない方が孤独死したら、片づけや葬儀費用は、原則亡くなった方の財産から支払われます。内容としては、亡くなった場所を清掃する特殊清掃費用と遺品整理費、そして葬儀費用がかかります。
それぞれ相場がありますが、正確に知りたい方は、生前に見積もりを取っておくとよいでしょう。このほか生前にできる準備としては、死後対策として、亡くなったあとの事務処理を行う死後事務委任契約、そして生前対策として、見守り契約や任意後継契約があります。
また、ご自身の思いや財産の使い道などが引き継がれるようにするためには、遺言書やエンディングノートを作成しておくことで、意思がより明確に反映されるでしょう。
出典
警察庁 令和6年中における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者について
厚生労働省 内閣府孤独・孤立対策推進室 地域共生の在り方検討会議(第4回)資料10 孤独・孤立対策
株式会社鎌倉新書 いい葬儀【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)
独立行政法人国民生活センター 消費者問題アラカルト 死後事務委託契約の注意点
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
