“夫の遺産5000万円を「夫の前妻の子」と分けました。同じ金額を相続したはずなのに、最終的な受取額が異なります。税金の負担が違うのはなぜ? “

配信日: 2025.12.14
この記事は約 3 分で読めます。
“夫の遺産5000万円を「夫の前妻の子」と分けました。同じ金額を相続したはずなのに、最終的な受取額が異なります。税金の負担が違うのはなぜ? “
夫が亡くなり、遺産として残されたのは5000万円。相続人は、妻である私と、夫の前妻との間に生まれた成人した子ども一人でした。
 
法定相続分に従って、それぞれが2500万円ずつを相続することになりました。ところが、手続きが進むうちに、私の手元に残る金額と、前妻の子が受け取る金額に大きな差が生じていることに気づきました。
 
「同じ2500万円を相続したのに、なぜ税金の負担が違うの? 」
 
本記事では、多くの人が疑問に感じるこの問題。その理由は、相続税の控除制度と課税の仕組みにあります。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

相続税は「相続人の関係性」で変わる

相続税は、単に「いくら相続したか」だけでなく、「誰が相続するか」によっても大きく変わります。
 
具体的には、相続税の計算において「基礎控除」と「遺産を取得した人ごとの税率・控除額」が設定されており、配偶者や実子、養子、兄弟姉妹など、関係性によって異なるのです。
 
今回のケースでは、相続人は「妻」と「夫の前妻の子」。どちらも「法定相続人」ではありますが、税法上の扱いは同じではありません。
 

配偶者には「配偶者控除」という特別な優遇措置

相続税法では、配偶者には非常に大きな優遇措置が設けられています。
 
具体的には「配偶者の税額軽減」といって、1億6000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで、相続税がかかりません。
 
この制度により、妻が相続した2500万円は、控除の範囲内にすっぽり収まります。つまり、妻は相続税ゼロ。一方、前妻の子にはこの配偶者の税額軽減が適用されません。
 

【PR】株式会社アートネイチャー

おすすめポイント

・自毛になじむ自然な仕上がり
・気になる部分だけのピンポイント対応OK
初めてでも安心のカウンセリング体制

前妻の子には相続税がかかる

相続税の基礎控除(全体で3000万円+法定相続人×600万円=4200万円)を差し引いても、課税対象となる遺産が残る場合があります。
 
計算の流れを簡単に見てみましょう。
 

1.遺産総額 5000万円
2.基礎控除 4200万円
3.課税遺産総額 800万円
4.法定相続分で按分(妻2分の1、子2分の1)
→各400万円が課税対象
5.税率10%・控除額0円(相続税の税額(速算表)による)

 
したがって、前妻の子には約40万円の相続税が発生します。一方で、妻は配偶者控除により非課税です。
 

「同じ額を受け取ったのに違う」その理由

同額を相続しても、税金の計算上の控除や優遇措置が異なるため、最終的に手元に残る金額が変わります。配偶者は法律上もっとも優先的に保護される立場であるため、税制上も特に優遇されています。
 
一方で、前妻の子どもも法的な相続権を持つ「正当な相続人」ですので、税負担の面では一般の子と同じ扱いになります。
 
また、もう一つの見落としがちなポイントとして、相続税は個人ごとに課税されるという点があります。「全体でいくら税金がかかるか」ではなく、各相続人が受け取った金額・関係性・控除額をもとにそれぞれに計算されるのです。
 

相続時に注意すべき手続きと対策

今回のようなケースは、再婚家庭では珍しくありません。生前に「誰がどれだけ相続するか」を明確にしておくと、相続時のトラブルを避けられます。
 
以下のような対策が有効です。
 

1.遺言書の作成

 相続分を指定しておくことで、後の争いを防げます。
 

2.生命保険の活用

 保険金は「みなし相続財産」として、非課税枠(500万円×法定相続人)を活用できます。
 

3.専門家への相談

 税理士に相談し、最も有利な形での分割・申告を検討することが重要です。
 

同額でも“手取り”は違う――相続は立場で変わる税の現実

同じ金額を相続しても、税金の負担は相続人の立場によって大きく異なります。配偶者控除の有無、基礎控除の配分、課税方式などが影響するため、実際に受け取る金額に差が出るのは自然なことなのです。
 
相続は「家族の最後の財産分配」であると同時に、法と税の知識が問われる場面でもあります。早めの準備と正しい理解が、トラブルを防ぎ、大切な人の思いを守る第一歩になるのです。
 

出典

国税庁 No.4155 相続税の税率
国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問