一人暮らしをしている息子(大学生)への仕送りでも贈与税が発生するケースがある? 税務署の判断ポイントとは
本記事では、仕送りに関する贈与税の考え方と、税務署がどこを確認するのかを整理し、安全に支援を続けるためのポイントを解説します。
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目次
贈与税の枠組みと年間110万円の基礎控除
贈与税は、個人から財産を無償で受け取ったときに課される税金です。暦年課税の仕組みでは、1年間(1~12月)に受け取った贈与額のうち、110万円を超える部分が課税対象となります。したがって、親から子への仕送りが年間110万円以内であれば、原則として課税されません。
ただし、これはあくまで贈与とみなされた場合のルールであり、仕送りがそもそも贈与に当たるかどうかは、税務署が「通常必要な生活費かどうか」を基準に判断します。つまり、同じ金額の仕送りでも、状況によって課税・非課税の扱いが大きく変わる点が重要です。
通常必要な生活費かどうかが判断の分かれ目
税務署が重視するのは、仕送りが「生活費や教育費として通常必要な範囲」に収まっているかどうかです。食費や家賃、光熱費、通学交通費、教材費など、学生生活を維持するために必要な費用と認められる範囲であれば、非課税と判断される傾向があります。
一方、以下のような場合には、贈与とみなされるリスクが高くなります。
・仕送り額が高額で、生活費の範囲を大きく超えている
・本来は子どもの収入で生活できるにもかかわらず、定期的に多額を支援している
・送金の一部が貯蓄や投資、ぜいたく品の購入などに回されている
・生活費や教育費とは無関係な用途のために高額な一括送金をしている
このように、税務署が仕送りをどう判断するかにおいては、金額だけでなく“使途”が重要です。仕送りが生活維持のために必要な支出であると説明できるかどうかが、課税を分けるポイントになります。
課税が起こりやすい具体的なケース
仕送りが一見ふつうの生活支援に見えても、状況によっては贈与税の対象と判断されることがあります。本章では、税務署が贈与とみなしやすい典型的なケースを整理し、特に注意すべきポイントを確認します。
実際に税務署が贈与性を疑うケースには、いくつかの特徴があります。
まず、年間の仕送り額が110万円を超える場合です。例えば月12~15万円を定期的に送ると、簡単に基礎控除枠を超えてしまいます。これが明確に生活の実態に見合わなければ、贈与と判断される可能性があります。
次に、子どもに一定の収入があるケースです。大学生でもアルバイト収入や奨学金を得ている場合がありますが、それらで十分に生活が成り立つ状況なのに親から多額の援助があると、「扶養の範囲を超えた贈与」と解釈されやすくなります。
また、使途不明の仕送りも注意が必要です。定期的に高額を送っているものの、実際には貯金や投資に回されている場合、生活費と認められず課税対象となる可能性が高まります。
課税リスクを下げるためのポイント
仕送りが贈与とみなされることを避けるには、日頃の送金方法や金額の管理が重要です。本章では、課税リスクを抑えながら安心して支援を続けるためのポイントを紹介します。
まず、年間110万円以内に収めることが最もシンプルな対策です。生活費だけに限定する場合でも、余裕があるならこの範囲に調整することが望ましいといえます。
さらに、仕送りの目的がはっきり生活費であると説明できる形にしておくことも重要です。一括で大きな額を渡すのではなく、毎月必要な分だけ送金する方法は用途の透明性が高まり、課税判断でも有利になります。
また、子どもの収入とのバランスも注意点です。援助がなければ生活が成り立たないことが客観的に説明できる状態であるほど、非課税として扱われやすくなります。
仕送りが贈与と判断されないように工夫しよう
仕送りは子どもの自立を支える重要な手段ですが、税務面のリスクを考慮した運用が必要です。年間の送金額を把握したうえで用途を生活費に絞り、さらに必要なタイミングで必要な額だけを支援するようにすれば、税務署から贈与と判断される可能性を大きく抑えられます。
親にとっても子にとっても過度な負担とならない形で支援を続けるためには、生活状況に合うよう工夫し、透明性の高い仕送り方法を選ぶことが大切です。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
