母から預かってと言われて入金された「300万円」。先日母が亡くなったのですが、私名義の口座にあるこのお金は「相続財産」に含めなくてもいいですか?
しかし、名義人が自分である以上、そのお金が「相続財産に含まれるのか」「本来の所有者は誰なのか」が問題となる場合があります。とくに相続税の申告においては、名義と実質の所有者が異なる「名義預金」の扱いが重要です。
本記事では、名義預金と判断されるポイント、相続財産に含める必要があるのか、そして申告漏れが生じた場合のペナルティーについて整理します。
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「預かって」と言われて入金されたお金は「名義預金」になる?
自分名義の口座に入金されたお金であっても、実際の所有者が母親である場合は、税務上「名義預金」と判断される可能性があります。
名義預金とは、預金口座の名義人ではなくそのお金の実質的な所有者が実際に管理している預金のことを指します。名義が誰であるかよりも、誰が管理・使用する権利を持っていたかが重視されます。
今回のように「預かって」と言われて入金された場合、その資金を自由に使えず、実質的には母親のお金として扱われていたのであれば、形式上は子ども名義でも、実質は母親の資産とみなされる可能性があります。とくに、入金の経緯や通帳・キャッシュカードなどの管理状況、資金の使用履歴などが判断材料になります。
例えば、母親が管理していた資金を一時的に預けたに過ぎない、または母親の生活費や介護費用などに使う目的で振り込まれたものであれば、その資金の所有者は母親であるとみなされる可能性が高くなります。
名義預金は相続財産に含まれる
名義預金と判断された場合、その預金は母親の相続財産として扱われます。形式上は子ども名義の口座であっても、実質的な所有者が母親であるため、相続財産に含める必要があります。
そのため、今回のケースにおいて、「300万円」が母親の資金を一時的に預かっただけにすぎず、通帳やキャッシュカードなどの管理者が母親である、または子どもが実際には自由に引き出していなかったといった事情があれば、母親が所有する資産と判断され、相続財産として計上しなければならない可能性は高いといえます。
反対に、母親が子どもに贈与したものであり、管理権限も子どもに移っていたと認められる場合であれば、その預金部分は名義預金とはならず母親の相続財産には含まれないでしょう。
しかし、贈与であったと主張するには、贈与契約が成立していたことが客観的に確認できる必要があります。
具体的には、母親が子どもにお金をあげる意思を示していたか、子ども側が贈与を受けた認識を持っていたか、通帳やキャッシュカード・印鑑を子ども側が管理していたかなどに加え、必要に応じて贈与契約書や贈与税の申告の有無などが重要な判断材料となります。
相続財産なのに申告しなかった場合はどうなる?
名義預金とみなされ、相続財産に含まれるはずであった預金を申告しなかった場合、追加の税負担が発生する恐れがあります。相続税の過少申告や申告漏れが認められた場合、過少申告加算税または無申告加算税が課される可能性があります。
また、相続税の納付が遅れた場合には、納付するまでの日数に応じて延滞税も加算されます。
さらに、申告漏れが悪質と判断されると、重加算税が適用されるケースもあり、結果として大きな追徴課税につながる可能性があります。とくに名義預金は税務調査で指摘されやすい項目のひとつであるため、自己判断で申告しないことは避けるべきです。
まとめ
「預かって」と言われて自分名義の口座に入金された300万円であっても、実質的な所有者が母親である場合は「名義預金」と判断され、相続財産に含める必要があると考えられます。
名義預金は相続税の申告漏れの対象になりやすく、申告しなかった場合には過少申告加算税や延滞税などのペナルティーが科される可能性があります。
入金の経緯や管理状況、資金の使途を整理したうえで、相続財産に該当するかどうかを判断することが重要です。不明点がある場合は、税理士など専門家に相談し、適切に申告することでトラブルを避けられるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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