空き家になった地方の実家を管理するための費用相場は? 放置してはいけない理由も解説
しかし空き家には毎年コストが発生し、放置が長いほど負担は増えていきます。本記事では、維持に必要な費用と負担を抑える方法を整理します。
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
空き家の維持に必要な「3つの基本コスト」
(1)固定資産税・都市計画税
空き家でも固定資産税等は毎年発生します。特に注意したいのは、管理不全空き家に指定されると軽減措置(6分の1)が外れ、税額が上がる可能性がある点です。「6倍」という表現がありますが、正確には軽減が外れる結果として税額が増える仕組みです。
(2)管理費(見回り・通風・清掃など)
遠方から自分で管理するのは難しく、民間サービスへ委託すると月5000~1万円が一般的です。住まない家は傷みやすく、換気不足や雨漏りに気づけないと後に大きな修繕につながることがあります。管理費は、状態悪化を防ぐための必要経費といえます。
(3)残置物の処分費
家具や家電が残っている場合、処分費用が必要です。量や地域にもよりますが、数十万~100万円超になることもあります。家電リサイクル対象品は、適切な処理が必要です。
※家に置いておくだけで罰則はありませんが、不法投棄には厳しい罰則があります。
放置が引き起こす“さらなるコスト”
● 建物の劣化による修繕費
空き家は人が住む家より劣化が早く、屋根・外壁・水回りなどに数十万~数百万円の修繕費がかかることがあります。寒冷地では冬場に水道管・給湯器の凍結が起こりやすく、修繕費が高額になるケースもあります。放置が長いと「解体」が必要になる場合もあり、木造一軒家で150万~300万円以上かかるケースが増えています。
● 近隣への影響
庭木の越境、倒木リスク、悪臭など、近隣からの苦情が発生する場合があります。対応が遅れると行政から指導を受けることもあり、精神的負担も大きくなります。
コストを抑えるための「3つの選択肢」
空き家は毎年コストがかかるため、何もせず置いておくことが最も負担が増える選択になりがちです。本章では、現実的な3つの方法を紹介します。
【選択肢1】売却して資金化する
残置物処理と簡易清掃のみで売却できる場合も多く、大規模修繕が不要なこともあります。条件を満たせば相続空き家特例(最大3000万円控除)が利用できます。価格だけでなく「買い主が近隣と良好にやってくれそうか」を重視される方も多く、配慮を優先するなら不動産会社による買い取りも有効です。
【選択肢2】管理を委託しながら“様子を見る”
帰郷予定がある、売却を迷う場合などは、月5000~1万円の管理委託で状態悪化を防ぐ方法があります。管理不全空き家の指定を避け、固定資産税の増額リスクを抑えられます。
【選択肢3】賃貸活用する
戸建て賃貸として収益化する方法もありますが、入居者が住める状態にする補修が必要で初期費用が高くなることがあります。地域需要や資金計画を踏まえた慎重な判断が必要です。
空き家の答えは“家族”によって違う
「売るべきか」「残すべきか」の正解は家庭によって異なります。空き家を放置すると税金・管理費・修繕費は確実に積み上がりますが、焦る必要はありません。家の状態と費用を整理し、生活に合った方法を選ぶことが大切です。
ただし、注意点もあります。譲渡益が出ると翌年度の国民健康保険料や介護保険料が上がる場合があります。売却額だけでなく、翌年の家計への影響も含めて検討しましょう。
空き家の売却・管理・活用には専門的判断が必要な場面もあるため、迷った際は相続や空き家に詳しい専門家への相談をおすすめします。
出典
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
執筆者 : 稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
