父の遺産分割でもめています。相続税の申告期限に間に合いそうもないのですが、ペナルティーはありますか?
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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期限までに申告しない場合はペナルティーが課せられる
親族が亡くなったら葬儀など緊急でやることが多く、あっという間に時間が過ぎてしまいます。相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に対して行うこととされています。
「10ヶ月あるので、少しゆっくりできる」と思いがちですが、経験者からは「10ヶ月しかないので大変だった」との声が多いです。
申告期限が過ぎると、本来の税金以外に延滞税や加算税がかかるケースがあります。相談者は、「間に合いそうにない」とのことですが、遅れそうな場合は対応が必要です。
「遺産分割でもめている」、つまり分割協議が進んでいない場合でも、各相続人などが民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従い財産を得たものとして、相続税の計算をし、申告と納税をします。
相続人たちにとっては仮の申告になりますが、この場合には注意点があります。相続税の特例である「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」や、「配偶者の税額の軽減の特例」などは適用できません。
分割後に適用を受けるためには、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。こうしておくことで分割協議が調った後に、修正申告や更正の請求をするときに適用を受けることができますが、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合に限定されています。
・修正申告
初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多いときに行う。
・更正の請求
初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ないときに行う。
修正の申告と異なり更正の請求ができるのは、分割のあったことを知った日の翌日から4ヶ月以内。
申告期限の翌日から3年を経過しても、分割できていない場合、例えば、裁判所に持ち込んでいるなど、やむを得ない事情がある場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を所轄税務の署長宛てに送付・提出し、その承認を受けます。
この承認後、判決の確定日など相続財産の分割が可能となった日の翌日から4ヶ月以内に分割されたときは、上記の特例の適用を受けられます。
「期限内に分割」を目指して協議を進めることが望ましい
分割協議が成立していない場合でも、このように相続税の申告と納税をすることで延滞税などのペナルティーを回避することはできます。
しかし、これまで見てきたように、納税時に相続税の特例は使えませんし、追加で書類を提出する必要があります。その後も、常に期限に追われることになります。相続の現場では、「言いたいことはあるけれど、我慢して譲歩するしかありませんね」という言葉を耳にすることが多いです。
不動産など分割が難しい相続財産をどうするのか? 売却して金銭を等分に分けることもできますが、現実的には困難なことが多いです。協議が長引くと時間もお金もかかります。できれば期限内に決着できるように、協議を進めることをお勧めします。
なお、期限内に納税が困難な場合、所轄税務署の徴収担当が相談窓口になります。なるべく早く相談されることをお勧めします。
出典
国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
国税庁 No.4208 遺産分割が行われていない場合の各種特例の適用手続
国税庁 税についての相談窓口
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士