母の遺産「預金300万円+自宅」。兄とどう分けるのが“いちばん揉めない”方法なの?
遺産分割において、不動産と預金という“形の異なる財産”を相続する場合は、非常に慎重に対応する必要があります。分割方法を誤ると、兄弟間の関係が壊れるほどのトラブルに発展しかねないからです。
そこで、本記事では、預金+不動産という遺産の相続で、少しでも揉める可能性を低くする方法について解説します。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
まずは遺産の総額と相続分を確認することが最重要
自宅を相続財産に含めた相続で揉めやすい原因の多くは、「自宅の価値」への認識の違いです。預金については口座の数字で金額が明確であるため、その価値に相違は起こりません。しかし、不動産という自宅の価値は見方によって変わるため、認識の差が起こりやすいのです。
相続において不動産の価格は、下記のようなものを参考に決められることが多いです。
・固定資産税評価額(実勢より低くなりがち)
・路線価(いわゆる相続税評価額でこちらも実勢より低くなりがち)
・不動産業者の査定額(いわゆる時価といわれるもので実勢価格に近い)
例えば、自宅の価格が路線価では1100万円程度だったとしましょう。その場合、不動産業者の評価額が1500万円ほどだった。このようなことが往々にしてあるわけです。
そのため、上記3つの評価方法それぞれを照らし合わせ、どのあたりの金額が妥当か、相続人の間で話し合うことが大切になります。
それに加えて、各相続人の法定相続分を確認します。法定相続分とは、法律によって定められた各相続人の相続分です。原則として、その割合に沿って遺産分割を定めつつ、寄与分や生前贈与などがあれば、それに応じて各相続人の相続分を調整していくことになります。
なお、基本的に兄弟姉妹は年齢や性別に関係なく同じになります。例えば、兄と弟が相続人であれば、それぞれ兄弟が等しい割合で相続することになるわけです。
仮に、遺産の総額が2000万円という場合は、兄と弟がそれぞれ1000万円ずつ相続するということになります。
不動産の共有はできるだけ避ける
相続において揉めないようにする鉄則として「不動産の共有は避ける」というものがあります。たしかに相続がまとまらず、いつまでたっても相続税の申告や納税ができないという場合などで、仕方なく一時的に全員合意のもと共有にすることもありますが、本来、相続財産である不動産の共有は望ましくありません。
なぜなら、共有状態にあるとき、相続人のうち誰か1人でも売りたいと考えたときや、自分もその不動産を使いたいと考えたとき、他の相続人の承諾が得られず揉めてしまう可能性もあるからです。ほかにも固定資産税は誰が支払うのか、日々のメンテナンスや清掃といった管理はどうするのかなど、問題は山積みとなるからです。
仮に、現状は問題なくとも、5年、10年と時間の経過とともに、各相続人を取り巻く事情が変動して争いが起こる可能性もあるため、将来を考えるのであれば、不動産は必ず単独で誰か1人が相続するようにすべきです。もしそれによって相続分が法定相続分よりも増減する場合は、金銭の支払いなどで調整することが理想です。
最も重要なのは全員がより納得できる形を意識すること
相続で揉めないために最も重要なことは、相続人全員が納得できる方法で遺産分割することです。
そのため、「一般的にはこうなっている」という一般論の一点張りになってしまうなど、凝り固まった考えを持つことは避けるようにしましょう。そんな考えによって、当事者にとって最も妥当であり、後々揉めることのない、いわば当事者にとっての最適解を見失ってしまう可能性があります。
まとめ
母の遺産が「預金300万円+自宅」という場合、兄弟2人で将来的な話も含め揉めないようにするには、自宅の価格をできる限り適正に評価し、そのうえで法定相続分を基準に金銭の支払いで調整しつつ、どちらか一方が自宅を相続するといいでしょう。
どうしても共有とする場合は、期限など条件を定めたうえで一時的なものにとどめておくべきでしょう。
とはいえ、相続は兄弟の仲を一瞬で引き裂くことにもなりえる非常に重要なライフイベントです。最適解は相続の数だけあると考え、まずは兄弟でしっかり向き合って話し合い、必要に応じて弁護士など専門家に助言を仰ぐとよいでしょう。
執筆者 : 柘植輝
行政書士