「貯金1500万円あるから、葬式代は心配しないで」という母。ただ死後は「口座凍結で引き出せない」と聞くのですが、本当に大丈夫でしょうか?“注意点と対策”を解説

配信日: 2026.01.10
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「貯金1500万円あるから、葬式代は心配しないで」という母。ただ死後は「口座凍結で引き出せない」と聞くのですが、本当に大丈夫でしょうか?“注意点と対策”を解説
名義人が亡くなったことを銀行に連絡すると、口座が凍結されます。しかし、名義人の口座に葬儀代や生活費を入れていた場合、凍結される前に引き出したいと考える人は多いのではないでしょうか。「貯金は1500万円あるから、自分が死んでも葬儀代は心配しなくていい」という母親の言葉をうのみにしてもいいのでしょうか?
 
今回は、このような場合に利用できる払戻し制度の概要や引き出せる金額、手続き方法を解説します。
金成時葉

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

払戻し制度で遺産分割の前でもお金を引き出せる

各相続人が、お金が必要になった場合に、遺産分割が終了する前でも相続預金の払戻しが受けられる制度を「相続預金の払戻し制度」といいます。平成30年7月の民法の改正によって設けられ、これにより、被相続人の口座から葬儀費用や生活費のためのお金を引き出せるようになりました。
 
払戻し制度には、家庭裁判所の判断を経るものと、判断を経ないものの2通りあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
 

家庭裁判所の判断を経て払い戻す

家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合、家庭裁判所へ申し立てを行い、審判を得ることで相続預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けられます。
 
払戻しができる金額は、家庭裁判所が仮取得を認めた金額となります。また、払戻しが認められるのは、生活費の支払いなどの事情により、仮払いの必要性が認められること、かつ、ほかの共同相続人の利益を妨げない場合に限られます。
 
必要な書類は、本人確認書類に加えて次の2つです。
 

・家庭裁判所の審判書謄本
・払戻しを希望する人の印鑑証明書

 
審判書謄本とは、家庭裁判所で行われた審判の内容を記載した審判書の写しのことです。審判書上確定表示がない場合は、審判確定証明書も必要となります。
 

家庭裁判所の判断を経ずに払い戻す

家庭裁判所の判断を経ず、口座ごとに次の計算式で求められる金額を払い戻すことができます。
 
単独で払戻しができる金額=相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
 
ただし、同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限となります。同一の金融機関のA支店とB支店など複数の支店に相続預金がある場合、全支店合わせて150万円が上限です。
 
払戻し制度を利用するにあたって必要な書類は、以下の通りです。
 

・被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
・預金の払戻しを希望する人の印鑑証明書

 
戸籍謄本と全部事項証明書は同じものです。戸籍謄本は紙の戸籍で発行していたもので、全部事項証明書は、戸籍をコンピュータ化した自治体が発行します。なお、どちらも戸籍に記載されている全員分を証明する書類です。
 
金融機関によって、必要となる書類が異なる場合があるため、事前に問い合わせておくとスムーズでしょう。
 

1500万円の預金をきょうだい2人ならいくら引き出せる?

金融機関Aに相続預金1500万円、相続人が姉と妹の2人いる場合、いくら払戻しができるのかを計算してみましょう。
 
1500万円×1/3×1/2=250万円
 
計算式から求めた金額は250万円となりましたが、同一機関からの払い戻し上限は150万円のため、姉と妹はそれぞれ150万円の払戻しを受けられることになります。
 
次に、金融機関Aに相続預金900万円、金融機関Bに相続預金600万円ある場合、いくら払い戻しができるのかを計算してみました。
 
金融機関A:900万円×1/3×1/2=150万円
金融機関B:600万円×1/3×1/2=100万円
 
この場合、姉と妹は金融機関Aからは150万円、金融機関Bからは100万円をそれぞれ払い戻せます。
 

万一に備えて事前に話し合いをしておこう

親が亡くなったときは、感傷に浸る間もないほど、しなければならない手続きがいろいろあります。遠方に住んでいる場合は、利用している金融機関が分からないケースもあるでしょう。いざというときにスムーズに手続きを進めるためにも、親が元気なときから話し合いをしておくことをおすすめします。
 
また、預金保険制度によって、万一金融機関が破綻した場合でも、1つの金融機関ごとに預金者1人あたり元本1000万円までと破綻する日までの利息は保護されます。しかし、それを超える部分は、金融機関の状況に応じて支払われるため、支払われない可能性もあります。預金が1000万円を超えるときは、金融機関を分けておくと安心でしょう。
 
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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