父の遺産は1500万円。母は「私には貯金があるし、一人息子であるあなたに全部あげる」と言うのですが、問題ないですか?

配信日: 2026.02.14
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父の遺産は1500万円。母は「私には貯金があるし、一人息子であるあなたに全部あげる」と言うのですが、問題ないですか?
人が亡くなると発生する相続。相続をするためには、さまざまな手続きや税金などが発生します。父が亡くなり、母と息子1人という家庭で、母から「遺産は全部あげる」と言われたらどのようなことが起こるのでしょうか?
神津喜代子

資産運用の相談業務

資産運用の相談業務のなかで、貯金・生命保険・投資信託・変額年金保険・投資信託・NISAを取り扱い、職員指導も行なった実績を活かし、お客さまから金融商品に限らず、相続などさまざまな相談を受ける。
 
現在も日本FP協会のSGに参加し、研修を継続中。わかりやすく正確な最新情報の提供に努めている。

そもそも相続とは?

相続は、人の死亡により発生します。死亡した人が所有していた、預貯金・現金・土地・建物・貴金属などすべての資産を相続人が引き継ぐことです。プラスの資産だけでなく、借金・住宅ローンなどのマイナスの資産も引き継ぎます。相続する人が相続人、死亡した人が被相続人です。
 

<相続の手続き>

(1) 法定相続人を確定する

相続人が生まれてから死亡までの戸籍謄本で確認します。
 

(2) 相続人の財産を確定する

相続人の預貯金、持ち物などを確認します。
 

(3) どのように分けるかを決める

遺言の有無も確認しましょう。
 

(4) 相続税がかかる場合

相続税の申告・納税を行います。
 

<法定相続人>

法定相続人は、法律上で相続人と規定され、相続する権利があります。法定相続人の順位、法定相続分は以下のようになります。配偶者は常に相続人になります。


(1) 配偶者1/2/+子ども1/2
(2) 配偶者2/3+親1/3
(3) 配偶者3/4+兄弟姉妹1/4

 

■配偶者が死亡している場合

(1) 子ども
(2) 親
(3) 兄弟姉妹

 
いずれの相続人も死亡している場合、代襲相続人として孫、祖父母、おい・めいが相続人になります。
 

<相続財産>

預貯金・現金・株式・土地・建物・貴金属など、相続人が所有していたすべての資産です。
 
会員権などの権利も引き継ぎます。借金・住宅ローンなどのマイナスの資産も相続します。家の中に残っているものから確認、そして取引のあった銀行の確認、エンディングノート、遺言書の有無も確認しましょう。
 

<税金>

「引き継いだ資産-相続税基礎控除」が、プラスになる場合、相続税の申告・納税が必要です。相続税基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算した金額を控除できます。基礎控除額より多い資産を相続すると、相続税がかかります。
 

母から「父の預金1500万円を、あなたに全部あげる」と言われた場合は?

相続人が母(配偶者)と子ども1人の場合、相続人は2人です。法定相続分どおりに分けるとすると2分の1ずつとなり、1500万円の法定相続分は「母750万円・子ども750万円」です。
 
では、子どもがすべて相続することはできるのでしょうか?
 
相続財産の分割については、法定相続分どおりではなく、相続人の話し合いで決めることができます。他の相続人が同意をしていれば、1人の相続人がすべて受け取ることもできます。今回の場合、相続人が2名で、「すべてあなたにあげる」と言っているので、1人の相続人がすべての財産を受け取ることができます。
 
ただし、口約束だけですべてを手続きしてしまうと、後から問題になることがあります。1人で受け取った記録が残っていないため、子どものみ受け取ることが承認されたことが明確に証明できません。銀行での解約手続きができない場合があります。今回の手続きについて、2通りの方法が考えられます。


(1) 相続放棄
(2) 遺産分割協議書の作成により、1人の相続人が受け取る

(1) 相続放棄について確認しましょう

この場合は、母が相続放棄の手続きをします。相続放棄した人は、最初から相続人ではなかったことになり、一切の財産、負債も含めて相続しません。相続放棄は家庭裁判所に届け出が必要です。
 
届け出の期限は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内です。一度放棄すると、撤回できません。相続放棄すると、自順位の相続人に権利が移ります、相続人が増え、手続きが複雑になる場合があります。
 

(2) 遺産分割協議書での手続きについて確認しましょう

遺産分割協議書を作成します。相続人の話し合いにより、相続財産を誰が引き継ぐかを決めます。その際、書類に残すことが必要です。貯金はA子に500万円・B夫に500万円、土地はC子など、分割の仕方を決め、遺産分割協議書を作成します。
 
相続人全員が記名押印(実印)しますが、家庭裁判所への届け出は不要です。記載していない資産が見つかった場合は、再度作成が必要です。記録を残すことにより、「あのお金はどうなったの?」など後々のトラブルを防げます。銀行での払い戻しの際も、遺産分割協議書が必要になります。
 
今回は、相続人が2名であり、遺産分割協議書の作成は、相続人同士で行えるので、簡単だと思われます。遺産分割協議書の作成が不慣れで、できそうもない、難しいなどの場合は、手数料がかかりますが司法書士または弁護士に依頼することもできます。
 

税金について確認

相続税については、「相続財産-相続税基礎控除」で計算をして残高がある場合、相続税がかかります。相続税基礎控除は、「3000万円+600万円×相続人」です。相続放棄した人がいる場合も、相続人数に含めて計算します。
 
今回は相続人が2名のため、「3000万円+1200万円=基礎控除4200万円」です。相続財産が預貯金1500万円のみであるとすると、「1500万円-4200万円」ですから相続税はかかりません。
 
その他の財産が見つかった場合も4200万円以下であれば、相続税はかかりません。相続税がかからない場合は、相続税の申告の必要はありません。
 

1人の相続人が受け取った場合、問題になることはあるの?

相続放棄をした場合、後から負債などが見つかった場合は、相続放棄した人には返済の義務はありませんが、残った相続人が返済するため、大きな負担がかかってしまう場合があります。
 
また今回は、子どもが相続人となり、次の順位の相続人はありませんが、次の順位の相続人が現れる場合があります、状況により、手続きが煩雑になってしまうことがあります。
 
相続放棄する場合は、他の相続人に知らせないまま手続きし、トラブルとなることがないように、相続人同士で話し合いをするなど、他の相続人に相続放棄することを伝えてから手続きしましょう。
 
相続について、母と子どもが相続人となった場合、母の希望で子どもがすべての財産を相続する場合を考えてきました。相続人同士がよい関係で話し合いができれば、希望に沿った相続を行えます。
 
法定相続人、相続財産を確認することで、どのように相続することがよいかを決めることができますが、相続財産には簡単には分けられないもの、負債がある場合などもあるので留意しましょう。
 
また、相続人についても、戸籍を確認すると、考えていなかった相続人が現れることがあるかもしれません。しっかり確認したうえでの手続きが必要です。相続は、人生のなかで大切な出来事です。相続人同士でしっかり話し合い、後悔のない相続となるように手続きを行いましょう。
 

出典

内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
 
執筆者 : 神津喜代子
資産運用の相談業務

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