NISA口座に「満額投資」する夫が、パート勤務“月収8万円”の妻の口座用に「月15万円」贈与! 税金がかかると聞きますが、それでも「3600万円」を埋めるメリットはありますか?
本記事では、夫婦の老後資産形成のための2人でNISAがなぜ贈与になるのか、50代があえて贈与税を支払い早めにNISA満額を検討する理由、夫婦でNISA3600万円の効果について解説します。
ファイナンシャルプランニング技能士1級、介護福祉士
「年金もあるのに、夫が満額埋めれば十分でしょ?」という妻
夫は「夫婦でNISA3600万円」と考え、NISAでの資産形成を進めていました。妻に足りない額を聞いたら「老後2000万円問題でしょ。あなた(夫)が満額埋めたら十分じゃない?」と言われ、夫婦の価値観の差にがくぜんとしたと言います。
なぜNISAは贈与になるのか
夫の手取りは年600万円、年360万円の生活費、余力の240万円と預金から120万円取り崩し、NISA枠年間360万円に充てていました。一方、妻は購入と売却を繰り返し全く進んでいない状態でした。
夫は妻のNISA口座に月15万円を入金することに
夫が自分の思い描いている計画を妻に伝えたところ、最終的には妻も自分のNISAでの資産形成は必要かもしれないと気付いたと言います。妻の預金は400万円、しかし「これは置いておきたい」と妻は言います。
妻のパート収入だけでは足りないことから、夫は毎月15万円、自分のNISA口座が満額埋まったら、余力の240万円を妻のNISA口座で運用しようと考えました。
「これは、夫婦2人の老後の生活費のためだから問題ないだろう」
確かに夫婦の生活費や教育費など日常生活に必要な範囲であれば、贈与とはなりません。
しかし、夫が妻に渡したお金をNISA口座に入れて、投資信託を購入したり、株式投資をしたりといった場合は、生活に必要な資金と見なされず、贈与税の対象になります。
贈与税を支払うのはもったいないか
贈与税を支払うこと自体が、確かにデメリットといえます。それでは、メリットはあるのでしょうか? 以下の3つのメリットが考えられます。
メリット1:時間を味方につけて資産形成が加速する可能性
NISA枠は早く埋めたほうが良い、これは市場の原理からすればおおむね正しい理論です。入金力が高いほうが、早く市場に資金を投入でき長期の運用が可能となります。
メリット2:50代の場合、役職定年などの収入減少リスクがある
役職定年に伴い、収入が減少するリスクもあります。早めに資産形成を終えておくことで、突然の収入減にもあわてずにすみます。
メリット3:50代後半は健康面のリスクが大きくなる
50代後半の健康リスクに悩む前までに、夫婦のNISA口座3600万円を埋めることは、働けなくなることへの備えの1つとなります。
夫婦で3600万円の威力
運用利回りを4%とした場合、夫は毎年360万円を一括投資し5年で満額、満額時55歳、資産額は2027万円となり、65歳の取り崩しまで10年置いて3000万円となります。
妻はパート収入8万円と夫の援助で6年かかり満額2034万円となります。妻は満額時に58歳、7年そのまま置けることにより、2784万円です。
65歳夫婦2人のNISAは、運用利回り4%と仮定した場合5788万円です。必要額を取り崩しながら4%で運用継続したと仮定すると、36年間毎月25万円取り崩しが可能となります。
どのくらい贈与税がかかるのか
この夫婦の場合、年間180万円の贈与が2回、年間240万円の贈与が3回、最後の年に144万円贈与でトータル約56万円の贈与税となります。
贈与税は、贈与額から基礎控除額110万円を差し引いた額が課税対象となり基礎控除後の課税価格により税率が異なります。
贈与額180万円の場合は、180万円-110万円(基礎控除額)×10%=7万円となります。控除額がある場合は、基礎控除額110万円を控除したあと、さらに控除額を控除し、最後に税率を掛けます。
図表1
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)より筆者作成
まとめ
夫婦の老後資金という共通の目的でも、口座はそれぞれのものです。だからこそ、どう準備するかも、それぞれの価値観が問われます。
贈与税を「コスト」と考えるか、「無駄な税金」と考えるか、「夫が満額なら十分」なのか、それとも「夫婦で満額」が安心なのか、その答えは、家庭ごとに違います。あなたの家庭の「十分」はいくらでしょうか。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者 : 藤田寛子
ファイナンシャルプランニング技能士1級、介護福祉士

