判断能力がなくなると、生前対策はできない! 知っておいてほしい“相続対策”の大切さ
配信日: 2019.10.29
まず、日本では『相続対策』というと、一部の富裕層のためにあるという思い違いがあるからでしょう。そして次に「自分が死んだ後のことは、残った人が考えればよい」という考えと、「死と向き合うのは怖い、嫌だ、不吉だ」という文化が根付いているからかもしれません。
それにしても、被相続人(相続財産を遺す人)と話し合いができない状態になってからの相談では、相談される側もできることが限られてしまうのです。
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
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判断能力がなくなると生前対策はできない!
たびたび話題になっていると思いますが、いまだに知らない人も多い問題点、それは被相続人(相続財産を遺す人)の判断能力がなくなると、相続対策ができなくなるという事実です。
本人の意思を明確にする「遺言書」や、財産の流れを細かく設定する「家族信託」(民事信託)の契約をするにも、本人の意思確認が必要です。意思疎通ができないと、書類の契約はできません。
また、預金通帳・保険証書・証券などの金融資産についても、動かすことができなくなります。年老いた親の銀行カードの暗証番号はご存じですか? ネット証券の暗証番号は分かっていますか? これらを知らずに、認知症になった親の財産管理ができなくなった方もいます。
さらに、「空き家問題」も深刻です。判断能力が亡くなった方の不動産は、売却も賃貸契約もできません。「認知症になった自分の親の財産を動かすだけなのに、そんなことあるのですか!」「親のお金に頼らないと、介護ができません」と驚かれるですが、それが決まりごとなのです。
親が再婚している場合は要注意
親が再婚の場合、これも注意が必要です。下記の図のケース、夫と元妻の間に子どもがいる場合は、その子どもにも相続権が発生します。
例えば、上記のケースにおいての相続割合は以下のようになります。
<相続割合>
妻 :2分の1
長女:6分の1
長男:6分の1
次男:6分の1
法律で定める「法定相続」ですと、妻と子どもの場合は、妻が2分の1、子どもが2分の1ですが、ここでいう「子ども」とは、前妻の子どもを含めた子どものことです。
子ども全員で、2分の1の財産を分けることになるので、6分の1ずつとなります。なので、父親の前妻との間に授かった子どもと、「長女」の相続割合は等しくなるのです。
※愛人や内縁の妻の子どもを「非嫡出子」(婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子ども)と言いますが、認知されていれば相続権は実子と同じ割合になります。
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相続人調査が必要です!
元妻との間の子どもと長年会っていない場合、どこに住んでいるかもわからないこともあるでしょう。多くの方はそのような場合は「仕方がないのでは」と認識されるかと思います。
しかし、この場合は、連絡先を調べなければなりません。理由は、相続が開始される際に、遺産についての話し合いをすることが義務付けられているのです。この話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。
「遺産分割協議」では原則、
●相続人全員の参加
●相続人全員の合意
上記の条件がそろって、初めて「遺産分割協議」が成立したことになります。ですから、例え長年会っていなくても、前妻との間の子どもにも「出席」または「合意」してもらう必要があるのです。
では、どうやって調べればよいのでしょうか? 時代は「個人情報」に非常にシビアです。しかしご安心ください。相続のために連絡先を知りたい場合は、「戸籍謄本」と「戸籍の附票」(現住所がわかるもの)を取り寄せることが認められています。
自分で取得し連絡をすることは可能ですが、いきなり連絡をするのも気が引けると思います。やはりここは、専門家に依頼するのがベストでしょう。余計なストレスもなくなります。この場合の専門家は、弁護士か司法書士です。
生前に対策をしておくことがより大切です
しかし、長年会っていない子どもは、どのような人になっているかわかりません。ましてや、遺産により、遺された妻や長女を守らなくてはならない場合は、天国で安らかに眠れないでしょう。ここは、生前に遺言書を作成することをオススメします。
遺言書の内容は「法定相続分」よりも優先されます。お子さまの立場であったら、ご両親にお願いするのも得策です。また、相続放棄などをして欲しい場合は、弁護士に依頼し併せて交渉をしてもらいましょう。
筆者のような相続診断士が「相続対策はお早めに」というと、営業活動に聞こえてしまうかもしれません。しかし、ギリギリの対策、または間に合わず、困った家族の事例を知っているからこそ伝えるひと言です。
緊急案件で十分に対策ができなかった、自分や仲間の無念な思い。そんなことがなくなりますように、一人でも多くのご家庭が笑顔相続となれますように願っております。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士