相続税対策のために知っておきたい、「生命保険財産完全防衛額」という考え方

配信日: 2021.01.21

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相続税対策のために知っておきたい、「生命保険財産完全防衛額」という考え方
被相続人(=亡くなった人)を分母、相続税を支払った相続人を分子として計算すると、8.5%の人に相続税が課税されています(2018年(※1))。
 
ちなみに、相続税を納めるのは相続財産(=相続時精算課税制度の贈与財産を含む。以下同じ)を受け取った人のうち、基礎控除の額を超えた場合です。ですので、亡くなった人が相続税を納めることはないのですが、統計では被相続人を分母に計算しています。
 
「ウチの場合は、どうなんだろう?」という方は、事前に相続税の課税が見込まれるのか否かのシミュレーションをしてみるのはいかがでしょう。そして、もし相続が起きた時に相続税の課税が見込まれるのであれば、事前に相続税の対策をしておく必要があるかもしれません。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

生命保険財産完全防衛額という考え方

相続税の課税が見込まれる方で、「受け取った相続財産から相続税を納めたくない」という方には、どのような対策ができるのでしょうか?
 
「生命保険財産完全防衛額」という考え方があります。
例として、以下のような前提条件を想定します。
 
<想定する前提条件>
■相続人は配偶者と子ども1人
■相続財産の額は3億円
■相続財産はそれぞれ2分の1ずつ、つまり法定相続分を相続する
 
配偶者は税額軽減の制度を適用することができ、配偶者が相続した遺産のうち課税対象となるものの額が1億6000万円までであれば、配偶者に相続税が課税されません。つまり、今回のケースで課税されるのは子どもだけです。
 
ここで、「生命保険財産完全防衛額」の確保を目的に、相続財産とは別に、新たに保険金4075万円の生命保険を契約することにします。その理由は以下の計算でご説明します。
 
<相続財産完全防衛額の計算>
まず、相続財産の額に受け取った生命保険金を加え、生命保険金の非課税額を差し引きます。
 
相続財産3億円 + 生命保険金額4075万円(※注) − 生命保険金の非課税額(500万円 × 相続人2名) = 3億3075万円
 
次に、相続税の基礎控除額を差し引きます。
3億3075万円 − 基礎控除(3000万円 + 600万円 × 2名) = 2億8875円
 
2億8875円のうち、相続税が課税されるのは子どもだけという想定ですので、
2億8875円 × 1/2 = 1億4437.5万円
 
続いて、相続税の納税額の計算です。
1億4437.5万円 × 40% − 1700万円 = 4075万円
(相続税の税率は、国税庁「No.4155 相続税の税率」(※2)を参照)
 
この相続税の納税額4075万円は、(※注)の生命保険金4075万円と同額です。相続財産3億円の相続税を納税するとしても、死亡保険金で充当できるので、相続財産と同等の価値が手元に残るということです。つまり、相続財産を全額受け取ったことと同じことになります。
 
これが、「生命保険財産完全防衛額」という考え方です。
 

「生命保険財産完全防衛額」の留意点

ただし、留意点があります。
 
1つ目は、生命保険の保険料です。保険金を受け取るためには、当然ながら保険料を支払わなくてはならず、それを負担しなくてはなりません。
 
2つ目は、相続財産の変化です。財産に不動産や株式等が含まれる場合、時間の経過とともにその評価額が上下する可能性があります。もしかしたら、将来相続税の税制や税率が変わるかもしれません。つまり、相続財産の価値が変化すれば、「生命保険財産完全防衛額」も変わってしまうということです。
 

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まとめに代えて

「生命保険財産完全防衛額」の確保を目的に生命保険を契約する場合は、前述の留意点を考慮した上で検討してください。また、相続税対策は他に、生前贈与や法人による死亡退職金、弔慰金という選択肢などもあります。さまざまな状況や選択肢を踏まえて、相続税対策を行いましょう。
 
(※1)生命保険文化センター「相続税を払う人はどれくらいいる?」
(※2)国税庁「No.4155 相続税の税率」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
 

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