密かに給与から引かれている雇用保険料。知っているようで知らない雇用保険の話

配信日: 2018.08.03 更新日: 2019.01.10

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密かに給与から引かれている雇用保険料。知っているようで知らない雇用保険の話
会社が倒産、人間関係が上手くいかないなど、急に退職しなければならないこともあります。次の職が決まっていれば良いのですが、そうでないときに生活の支えになるのが、雇用保険制度の失業給付です。
 
給与明細を見ると、毎月少しずつ給与から引かれていますね。でも、雇用保険=失業保険ではないのです。雇用保険制には、失業給付だけではない、いろいろな給付があるのです。
 
林智慮

Text:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

密かに給与から引かれている雇用保険料

雇用保険は、失業等給付と雇用保険2事業とあります。
 
失業給付等は、失業した人にいろいろな給付で支援をするものであり、雇用保険2事業は、事業主への雇用安定(失業予防等)支援や、能力開発のための職業・教育訓練を支援するものです。
 
国と会社と従業員とで保険料を負担しますが、従業員個人負担は失業等給付の分のみです。会社負担の分は、失業等給付と雇用保険第2事業を負担します。保険料は、従業員の毎月の給与に保険料率を掛けて算出します。
 
平成30年度の保険料率は、失業等給付に当たる分は会社と従業員がそれぞれ3/1000(農林水産・酒造・建設は4/1000)を負担します。そして、雇用保険2事業の保険料を会社が3/1000(建設は4/1000)負担します。その残りは、国が負担しているのです。
 
20万円の給与に対して3/1000は、僅か600円。これだけの保険料で職を失ったとき、約4850円の日額手当が支給されます。
 

失業中の生活を支える基本手当

失業給付金には、休職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
 
このうちの求職者給付に、一般被保険者、高年齢被保険者(65歳以上の被保険者)、短期雇用特例被保険者(季節労働者、1年未満の短期雇用)、日雇労働被保険者(日雇い、30日以内の期限雇用)と、それぞれ雇用や年齢別で手当が違います。
 
一般被保険者には、基本手当、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当があります。
 
基本手当は、ハローワークに求職の申し込みを行い、就職しようという意志があるにもかかわらず「失業の状態」にあること。離職の日前2年間に、被保険者期間が通算して12カ月以上加入していること(倒産・解雇による場合特定理由受給資格者・一部の特定理由離職者[更新を希望したのに通らなかった場合] は前一年間に6カ月以上)が必要です(このとき、1カ月に11日以上賃金が支払われた月を1月とします)。
 
受給日数は、次のように保険者期間や離職理由によって違います。
 
●【一般(定年とか自己都合)】の場合は、年齢にかかわらず、被保険者であった期間が1年以上10年未満は90日、~20年未満は120日、20年以上は150日です。

●【特定受給資格者・一部の特定理由離職者】の場合は、被保険者であった期間が1年未満でも年齢にかかわらず90日の受給ができます。それ以上の場合は、年齢によって日数が違います。同じ期間でも45歳から60歳の受給日数が最も多く、20年以上330日が最長になります。

●【就職困難者※】は、被保険者期間1年未満は受給日数150日、1年以上は45歳未満は受給日数300日、45歳以上65歳未満は受給日数360日です。自己都合の退職でも、就職困難者に当たる場合は受給日数が長くなります。
※就職困難者とは、1.身体障害者、2.知的障害者、3.精神障害者、4.警報等の規定により保護観察に付された方、5.社会的事情により就職が著しく阻害されている方など。
 
基本手当ての受給期間は、原則、受給日数と離職した日の翌日から1年間(所定給付330日の場合は1年と30日、360日の場合は1年と60日)ですが、その間にケガや出産で30日続けて働けなくなった場合は、働けなくなった日数だけ受給期間を延長できます (最長、離職の翌日から4年を経過する日まで) 。
 
また、離職票の提出と求職の申込みを行った日から通算して7日間が待機期間ですが、自己都合や重責解雇による退職は、待機期間後さらに3カ月の給付制限があります。ハローワークからの職業の紹介や訓令を正当な理由無く拒んだ場合も給付制限があります。
 
給付制限中に就職をして一定の要件を満たした場合、再就職手当を受給することができます。
 
基本手当の日額は、離職日直前の6カ月の賃金日額の50~80%(60歳から64歳については45~80%)で、賃金の低い程高い率が適用されます。
 
上限下限が決められており、30歳6710円、~45歳未満7455円、~60歳未満8205円、65歳未満7042円が上限、下限は1976円です(平成29年8月1日現在)。
 

一般被保険者の基本手当以外の手当

一般被保険者には「基本手当」のほかに、「技能習得手当」「寄宿手当」「傷病手当」、高年齢被保険者には「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者には「特例一時金」、日雇い労働被保険者には「日雇い労働求職者給付金」の支給があります。
 
●「技能習得手当」は、公共職業訓練等を受講する場合に受講手当(日額500円、上限2万0000円)と通所手当(交通費)が支給されます

●「寄宿手当」は、公共職業訓練等を受講するために家族と別居する場合に月額1万700円支給されます

●「傷病手当金」は、ハローワークに求職の申し込みをした後に、15日以上連続で病気やケガのために職に就けない時に、基本手当の支給残日数を限度に、基本手当と同額の傷病手当金が支給されます。

●「高齢者求職者給付金」は、65歳以上の離職者(離職前1年間に雇用保険加入が6カ月以上ある場合)で、ハローワークで求職の申し込みをしたが見つからない場合、失業の認定を受けることで給付金が支給されます。被保険者期間が1年以上の場合は、基本手当の50日分、1年未満の場合は30日分が一時金として支給されます。

●「特例一時金」は、季節雇用者など1年未満の短期雇用の被保険者には、一般被保険者とみなして計算した基本手当の日額の30日分(当分は暫定措置で40日分)の支給となります。

●「日雇労働求職者給金」は、日雇い労働者に対しての特別な雇用保険です。ハローワークで「雇用保険日雇労働被保険者手帳(日雇手帳)」を交付してもらい、日雇いで働いた場合に賃金の支給を受けるときに会社で手帳に印紙を貼ります。印紙が2カ月間で26枚以上貼られていれば、翌月失業した場合に給付金を受けられます。ハローワークで日雇手帳の交付の際、失業認定・給付についてはどのハローワークへ行くか指定されます。
 
詳細は、厚生労働省HP、ハローワークインターネットサービスHPをご覧ください。
 
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP

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