更新日: 2019.06.28 生命保険

生命保険の保険料を他人と比較しないほうが良い理由

執筆者 : 横山琢哉

生命保険の保険料を他人と比較しないほうが良い理由
生命保険文化センターが行った調査によると、1世帯あたりの生命保険の年間払込保険料(2人以上の世帯)は平均で38.2万円という結果が出ています。月額にすると約3万円です。
 
このデータはよく引用されますが、はっきり言って何の参考にもなりません。そのため、あまり気にしないようにしましょう。今回は、保険料として支払っている金額を他人と比較しないほうが良い理由について解説します。
 
横山琢哉

執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター

保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。

保険料の目安は収入の10%?

生命保険文化センターは、生命保険に関するさまざまな実態調査を行っています。
 
2人以上の世帯を対象に行っている「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年度)によると、生命保険の世帯年間払込保険料は全生保で38.2万円となっています(全生保とは、民間の保険会社や郵便局、JA、県民共済・生協等で扱っている生命保険・共済のことです)。
 
また、個人を対象に行っている「生活保障に関する調査」(平成28年度)によると、年間払込保険料の平均は男性が22.8万円、女性が17.4万円です。
 
いずれも保険の利用を最小限にとどめようと考えている人からすれば、かなり高額だという印象があるのではないでしょうか。しかし、こうしたデータはあまり気にする必要はありません。
 
理由はとても簡単です。なぜなら、このデータは貯蓄型の保険と掛け捨ての保険を区別して集計していないからです。これ以外でも、毎月の保険料は収入の10%以内にすべきと言われたり、月に1万円程度が目安と言われたりすることがありますが、同様に気にする必要はないでしょう。
 

同じ保険金額でも、貯蓄型と掛け捨てでは保険料がまったく違う

貯蓄型保険の保険料が高いのは当たり前

 
貯蓄型の保険と掛け捨ての保険は保険金額が同じでも、支払う保険料はまったく違います。
 
例えば500万円の死亡保障を得る目的で、養老保険と定期保険に加入する場合の比較をしてみましょう。30歳の男性が30年間500万円の死亡保障を得るために、A保険会社の定期保険とB保険会社の養老保険に加入した場合で比較します(いずれも実在する保険会社です)。
 
A保険会社のホームページにある保険料シミュレーションで試算したところ、月額保険料は1055円となりました。30年間の保険料は総額で37万9800円です。
 
一方、B保険会社はホームページにちょうど同じ例が掲載されており、月額保険料は1万4705円となっています。30年間の総額は529万3800円で、月額保険料の差は約14倍です。
 
養老保険の場合は、保険期間中に保障の対象となる人が死亡しても、無事に満期をむかえても、同じ保険金が受け取れます。定期保険のように保険金を受け取る人がごく一部ではないので、高い保険料を支払うことが必要になるわけです。
 

養老保険は元本割れしていますが…

 
お気付きかもしれませんが、養老保険は元本割れをしています。保険料として529万円を支払うのに、満期をむかえても500万円しか受け取れないからです。
 
ただし、これはただちに損というわけではありません。なぜなら、定期保険に加入する場合は37万9800円が掛け捨てになりますが、養老保険の場合は保険期間中の死亡保障を得るために、結果として29万円を支払っただけで済んでいるからです。
 
そのため、少しでも有利に死亡保障を得ることだけが目的であれば、これは非合理的な選択ではありません。ただ、加入している間は保険料相当額の資金が拘束されるので、たったこれだけの違いで養老保険を選ぶ人はあまりいないでしょう。
 
養老保険は、景気の良かった頃は有利な資産運用ができたため人気がありましたが、金利が低い昨今はメリットがあまりないため加入する人は少なくなっています。
 

必要な保障は人によってまったく違う

以上で見てきたとおり、貯蓄型保険と掛け捨ての保険では保険料がまったく違います。これを一緒に集計して「保険料の平均は38.2万円」という数値を示されても、何の参考にもならないことはもうお分かりでしょう。
 
また、必要な保障も人によって違います。例えば貯蓄が十分にあるなら医療保険やがん保険に加入しなくても良いと考える人もいるでしょう。その場合はそれだけ保険料負担が少なくなります。
 
また、夫婦共働きでそれぞれ正社員として十分な収入があり、かつ小さな子どももいないというのであれば、保険料がかさみがちな死亡保障は最小限で済むでしょう。
 
大事なことは他人との比較ではなく、自身にとって必要な保障は何なのかということを見極め、保険で備えるのが有効と考えるのであれば保険を活用するということです。
 
他人がどうなのかということが気になるのはごく一般的な心理です。しかし、少なくとも他の人がどのくらいの保険料を支払っているのかというデータについてはあまり参考にならないので、流されないように気を付けましょう。
 
出典:生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」
   生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査(速報版)」
 
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
 

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