健康状態で保険料が変わる?「健康増進型保険」の特徴と使い方
配信日: 2019.06.20
保険ショップのような複数の保険会社の商品を扱う代理店で保険の相談をすると、ユニークな商品だからということで加入をすすめられることがあるかもしれません。そこで今回はそんなときにどう考えるべきか、1つの視点を提供します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
健康増進型保険の特徴
民間の保険商品には、被保険者の「契約時」における健康状態によって保険料が割引になる商品が、以前から数多くあります。
健康状態を評価する基準は各社でおおむね共通しており、BMI、血圧、過去1~2年における喫煙状況の3点が含まれていることが多いです。これらの状況から被保険者を「標準体」「非喫煙優良体」のようにランク付けし、適用する保険料率を決めています。
ただし、従来の商品はあくまで「契約時」における健康状態が評価の対象であり、そのときに決定された保険料がその後もずっと続くのが特徴でした。
しかし、近年増えている健康増進型保険と呼ばれる商品は「加入後」における健康状態が保険料に反映される(または祝い金が支払われる)点で、従来の商品とは異なっています。つまり、努力すれば保険料が安くなる可能性がある、ということです。
一例を挙げると以下のような商品です。
・住友生命「Vitality」
・東京海上日動あんしん生命「あるく保険」
・明治安田生命「ベストスタイル 健康キャッシュバック」
仕事が忙しくて運動する時間がとれない、あるいはスポーツジムに加入しても続かないという方もいるでしょう。そのような場合にはこうした保険に加入することで、運動への強制力となる効果が期待できます。
また、保険会社の立場から考えても、被保険者が健康維持の努力をした結果として支払う保険金が少なくなればメリットがあります。そのため、商品のコンセプトとしてはとても良いものであると言えるのではないでしょうか。
「1日8000歩」、達成できますか?
加入後における被保険者の健康状態を評価する基準は、商品によって違います。
例えば「Vitality」の場合、健康診断の結果(血圧や血糖値、コレステロール値など)、スマートフォンやウェアラブルデバイスによって計測した1日の歩数や心拍数、がん検診の受診結果などを総合的に評価して点数化する複雑な仕組みとなっています。
これに対し「あるく保険」は、1日で歩いた歩数のみを基準にしているので単純です。「あるく保険」では1日平均で8000歩以上を達成すると、半年ごとの達成状況に応じて健康増進還付金を受け取ることができます。
ところで、みなさんは平均で1日あたりどのくらいの歩数を歩いているか、即答できるでしょうか。今はスマートフォンのアプリを利用すれば、簡単に歩数を把握することができます。バッテリーの消費量も少なく、アプリを起動しておくだけで自動的に計測されるので便利です。
スマートフォンで計測した歩数は思いのほか正確です。実際に歩きながら数字を確認してみれば、違いは誤差といえる程度であることがわかります。無料で利用できるので、興味があればぜひ実際にやってみてください。
1日8000歩という基準は、座っている時間が長いデスクワークや車の運転などの仕事でもなければ、達成することはそれほど難しくないでしょう。
しかし、休日のことも考えておかなければなりません。外出しない日があると、平均値がどんどん下がってしまいます。また、デバイスを装着していないときの歩数はカウントされません。
いったん平均値が下がってしまうと取り戻すのは意外と大変です。筆者はウォーキングをする習慣がありますが、信号待ちのないところで1時間、歩き続けても5000~6000歩くらいです。
そのため、加入を検討するならあらかじめ歩数をしばらく計測してみて、達成可能かどうか考えてみることをおすすめします。
健康増進型保険は保険料の割引を期待して加入するものではない
健康増進型保険は、保険料を安くしたいということが目的ならあまりおすすめできる商品とは言えません。保険料を安くしたいだけなら、なるべくムダな特約を付加せず保障を必要最小限におさえたうえで、複数の保険会社の商品を比較して選ぶのがベストです。
健康増進型保険は「怠けていると保険料が上がってしまう」というのがプレッシャーになって、健康維持の努力が継続しやすくなるという点を期待して加入するのが向いているでしょう。
なお、健康増進型保険に加入するならどのような基準で健康状態が評価されるのか、基準を達成するとどのくらい保険料に反映されるのかということをよく確認して判断しましょう。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター