車を持つと必ず入る「自賠責保険」どこまでが補償範囲?基本をおさらい
配信日: 2019.07.01
今回は、車を買うときや、車検のときなどに保険料を支払う「自動車損害賠償責任保険」について見ていきたいと思います。
自動車損害賠償責任保険は、「自賠責保険」と略されます。これは、車に乗るときに必ず入っておく必要のある「強制保険」です。
これに対し、民間の自動車保険は、入りたければ入りなさいという意味で「任意保険」と呼ばれています。
一般的には自賠責保険に入りつつ、事故などで損害額が多額になる可能性を考慮し、民間の損害保険会社を通じて自動車保険に加入する、という方が多いと思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
自賠責保険の補償は「基本的」な「対人賠償」
それでは、自賠責保険の補償には、どのようなものがあるか見ていきましょう。
そもそも自動車損害賠償保障法にもとづき、原付を含むすべての自動車は、自賠責保険に加入していなければ運転することはできません。いわゆる無保険運転は違法です。
自賠責保険では、「交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補填することにより、基本的な対人賠償を確保すること」が目的となっています。
ポイントは「基本的」な「対人賠償」という点です。つまり、物損は補償の対象にはなりません。あくまでも「対人賠償」で、しかも「基本的」な補償に限られています。私たちが知っている任意の自動車保険との違いはここにあります。
例えば、交通事故で歩行者をはね、その方が亡くなった場合。対人損害賠償保険金の限度額は、被害者1名につき3000万円となっています。民間の自動車保険では、通常、対人損害賠償保険金は無制限で設定するため、このような意味で「基本的」というわけです。
自賠責保険の補償限度額
もう少し詳しく、補償内容について見ていきましょう。
〇死亡による損害
限度額 被害者1名につき3000万円
(補償内容)葬儀費・逸失利益・慰謝料
〇後遺障害による損害
限度額 :(1)神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する障害
被害者1名につき 常時介護を要する状態(第1級) 4000万円
随時介護を要する状態(第2級) 3000万円
(2)(1)以外の後遺障害 被害者1名につき 第1級3000万円~第14級75万円
補償内容 逸失利益・慰謝料等
〇傷害(ケガ)による損害
限度額 被害者1名につき 120万円
(補償内容)治療費・看護料・諸雑費・通院交通費・義肢などの費用・診断書などの費用・文書料・休業損害・慰謝料
ポイントは、それぞれの補償における限度額です。
死亡による損害はもとより、後遺障害による損害が75万円~4000万円、傷害(ケガ)による損害が120万円と、人さまに対する損害賠償としては民間の自動車保険と比べて少ない印象を持ちます。
自家用自動車の場合、自賠責保険料は24ヶ月(2年)で2万5830円、36ヶ月(3年)で3万5950円となっています。これらを1ヶ月当たりの金額に換算すると、前者が約1076円、後者が約998円です。
こちらも民間の自動車保険より少額であるため、補償内容が基本的であるというのは頷けます。
自賠責保険の保険料も、自動車にかかる税金と同様、自動車を運転する人にとっての必要経費です。必ず入らなければならないため、自動車関連費としてしっかりコスト計算に入れておくようにしましょう。
次回は、民間の自動車保険についてポイントを整理していきます。
出典:国土交通省 自動車安全情報「自賠責保険(共済)ポータルサイト > 限度額と保障内容」
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)