「介護保険は、要介護度が高い方がお得」これって本当?
配信日: 2019.07.06
しかも、サービス費用の原則1割で利用できるのですから、要介護度が高い方がお得のようです。本当でしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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要介護度に応じた利用限度額がある。
介護サービス費用には要介護度に応じた利用限度額があります。この利用限度額以内の介護サービス費は原則1割ですが、利用限度額を超えた場合、超えた分は全額自己負担になります。
例えば、居宅サービスの場合、要支援1で約5万円、介護度が1上がるごとに、約5万円増え、要介護5では約36万円となっています。したがって、要介護度が高い方が、原則1割の負担で利用できるサービスが増えます。
なお、利用限度額は令和元年9月以降、消費税が10%になるに伴い改訂される予定です。
要介護度により、利用できないサービスがある。
要介護度により、利用できるサービスと利用できないサービスがあります。例えば、施設サービスは、要支援の方は利用できません。介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院は要介護1からしか利用できません。特別養護老人ホームは原則要介護3からしか利用できません。
利用頻度の多い訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(デイサービス)も要介護1からの利用になります。要支援1・2の方は、全国一律の介護サービスではなく、市区町村が行う地域支援事業の中の「介護予防・日常生活支援事業」として、訪問型サービス・通所型サービスを利用します。
福祉用具貸与サービスも要介護度によって利用できるサービスが異なります。車いすや介護用ベッドなどは原則要介護2以上でないと利用できません。
このように、要介護度により、利用できるサービスと利用できないサービスがありますので、要介護度が上がったほうが、サービスの選択肢が増えます。
要介護度により、サービス料金が上がる
介護サービスの中には要介護度が上がると基本料金が高くなるものがあります。例えば、特別養護老人ホームなどの施設サービス、通所介護(デーサービス)、短期入所生活(療養)介護(ショートステイ)などです。同じサービスを利用していても要介護度が上がると利用者負担が増えてしまいます。
一方、要介護度に関係なく基本料金が設定されているサービスには、訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問看護、居宅療養管理指導、福祉用具の購入・貸与、住宅改修などがあります。
このように、要介護度が上がると基本料金が高くなるサービスがありますので、必ずしも要介護度が高い方が得とはいえません。
利用者の状態にあった要介護認定を受ける
要介護が改善して、サービス量を減らすことができるなら、要介護度認定区分の変更を検討してみてはいかがでしょうか。認定の有効期間は、新規は原則6か月(市区町村により最長12か月)、更新した場合は原則12か月(市区町村により最長36か月)です。
意外と知られていませんが、利用者の状態に変化があった場合は、更新時でなくともいつでも「区分変更」の申請ができます。
利用者の状況が悪化して現在の利用限度額ではサービス量が足りない場合、逆に状況が改善してサービス量が減らせる場合など利用者の状態に合わせた要介護認定を受けるために「区分変更」の申請をしましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。