4月に値上がりした介護保険料。一体、どういう仕組みで保険料は決まるの?
配信日: 2020.08.28
今回は、介護保険料はどのような仕組みで決められるのかについて解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
制度の仕組み
介護保険制度の仕組みは、以下の図のとおりです。
出典:厚生労働省「介護保険制度の仕組み」
左上にあるのが、財政構成(財源)です。
介護保険制度の財源は、大きく分けると50%が税金(公費)で、残りの50%が保険料(介護保険料)で賄われているという構成になっています。介護保険制度の被保険者は、第1号被保険者(65歳以上の人)と第2号被保険者(40歳から64歳までの人)がいます。
第1号被保険者と第2号被保険者で、保険料全体をどのように負担するのかについては、それぞれの被保険者の人口比に基づき設定をします。
上の図では、第1号被保険者が21%、第2号被保険者が29%を負担することになっていますが、令和元年度の予算では、第1号被保険者が23%、第2号被保険者が27%を負担することになっています。
保険料設定の仕組み
介護保険の第1号被保険者の保険料設定の仕組みは、以下の図のとおりです。
出典:厚生労働省「介護保険の保険料(第1号被保険者)」
第1号被保険者の場合、保険者(運用主体)は市町村です。
市町村は、それぞれの状況(設備・サービスがどれくらい整備されているか、設備・サービスがどれくらい利用されるか、など)に応じて、ベースとなる保険料(保険料基準額)を設定します。その上で、負担能力(基準は市町村民税の課税状況など)に応じた負担額の設定をします。
介護保険の第2号被保険者の保険料設定の仕組みは、以下の図のとおりです。
出典:厚生労働省「令和2年度介護納付金算定にかかる諸係数について」
第2号被保険者の場合、保険者(運用主体)は各医療保険者です。この場合の各医療保険者とは、具体的には協会けんぽ(全国健康保険協会)、健保組合(健康保険組合)、共済組合、国保(国民健康保険)などを指します。
保険料設定の方法は、まず第2号被保険者の負担金額(上の図では27%の部分)を全国の第2号被保険者数で割り、1人当たりの保険料額を算出します。1人当たりの保険料額を算出したら、国保については被保険者数(加入者数)に応じた負担額が割り振られます。これを「加入者割」といいます。
それ以外の各医療保険者(協会けんぽ、健保組合、共済組合など)については、それぞれの被保険者の負担能力(総報酬)に応じた負担額が割り振られます。これを「総報酬割」といいます。
加入者割と総報酬割の違いは、以下の図をご覧いただくと分かりやすいです。
出典:厚生労働省「総報酬割のイメージ等」
これまで、第2号被保険者の保険料の設定の方法は、加入者割が採用されてきました。
しかし、加入者割では保険者間での負担に不公平感が生じており、それを解消するために段階的に総報酬割が導入され、令和2年4月より全面的に採用されるようになりました。
まとめ
介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みです。
厚生労働省の「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年度」によれば、「介護保険制度は、制度創設(2000年4月末)以来18年を経過し、65歳以上被保険者数が約1.6倍に増加するなかで、サービス利用者数は約3.2倍に増加(2018年4月末時点)」とあります。今後もこの傾向は変わらず、介護保険制度は無くてはならない制度といえるでしょう。
介護保険料がどのように決められているかに興味を持つことで、世の中の仕組みが少し分かるような気がします。この機会に、他の制度(例えば年金など)についても調べてみてはいかがでしょう。
出典
全国健康保険協会 「協会けんぽの介護保険料率について」
厚生労働省 「介護保険制度の仕組み」
厚生労働省 「制度の持続可能性の確保」(令和元年10月28日)
厚生労働省 「介護保険の保険料(第1号被保険者)」
厚生労働省 「令和2年度介護納付金算定にかかる諸係数について」(令和2年2月21日)
厚生労働省 「費用負担(総報酬割)」(平成28年11月25日)
厚生労働省 「総報酬割のイメージ等」
厚生労働省 老健局 「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年度」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー