医療保険の進化と真価を問う
配信日: 2018.05.12 更新日: 2019.01.10
そして、保険事故をきっかけに受け取ることができる給付金は「入院1日当たり1万円」という具合に「日額」を定めて契約し、その受け取ることができる給付金額は日額に入院日数を掛けて計算、つまり給付金の額は入院日数に比例することになります。
そんな(民間の)医療保険に対する関心が高まる一方で、私たちは既に、健康保険や国民健康保険などの公的な医療保険にも加入しています。(民間の)医療保険には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
公的な医療保険制度で十分?
健康保険や国民健康保険などの公的な医療保険は、3割の自己負担で治療を受けることができます。そして、3割の自己負担額が一定の額(=お給料によって異なる)を超えると高額療養費によって、自己負担額が軽くなる制度となっています。
この高額療養費制度の存在ゆえ「(民間の)医療保険は要らない」という主張を展開するファイナンシャルプランナーもいます。
しかし、高額療養費制度と言えども「自己負担がゼロ」になるわけではありませんし、入院時食事療養費の自己負担は上がり続け、今や一食当たり460円です。加えて、本人の選択にもよりますが、差額ベッド代が掛かることもあります。
何よりも、入院、加えて手術ともなると、不測かつ痛い出費であることは間違いないと言えるのではないでしょうか。そんな不測かつ痛い出費に備えるための(民間の)医療保険という考え方もできますね。
不測かつ痛い出費に(民間の)医療保険は応えることができるのか?
では入院という、不測かつ痛い出費に(民間の)医療保険は、どのように応えるのでしょうか?最大の強みは何と言っても、給付金を現金で受け取れる、そして(個人で受け取る場合は)給付金は非課税で、その使い道は、もちろん自由です。
そして、入院日数が長くなれば長くなるほど、つまり入院日数に比例して給付金額は増えていきます。なので、重篤な病気で入院日数が伸び、病院への支払いが増えたとしても、(民間の)医療保険なら安心と言えそうで…しょうか?
ところで、最近の入院事情は?
今のご時世、入院しても数日程度で退院してしまうことも珍しくないようです。
筆者の経験則で恐縮ですが、筆者のお客様でご入院を経験された方の中には「金曜日の夜、仕事帰りに入院し、土曜日の朝に手術、日曜日もそのまま入院して、月曜日の朝、病院から職場に出勤した」と、わずか4日間で退院してしまった、という方もいらっしゃいます。
つまり、4日間の入院では、「入院日数に比例して給付金を受け取る」タイプの医療保険では、受け取ることができる給付金額も多くはなさそうですね。
進化した(?)医療保険
最近の(民間の)医療保険では、入院日数に関わらず「一時金で10万円を受け取ることができる」プランや、「入院日数が10日未満の場合は、10日分の給付金を受け取れる」という商品が登場しました。
入院しても数日程度で退院してしまう、という最近の入院事情に応えたと言えるのではないでしょうか?
そもそも医療保険は元が取れない
最近の医療保険よりも、もっと根本的なお話です。そもそも医療保険は元が取れない、という理由で(民間の)医療保険を勧めないファイナンシャルプランナーもいます。
なるほど、確かにその通りだと思います。例えば、毎月5000円の保険料を1年で12カ月、30年払ったとすると、保険料の合計はいくらになるでしょうか?
「保険ではなく、毎月5000円の貯金の方が良いのでは?」という発想もうなずけます。
しかし、貯金は「万が一の時のお金」が貯まるまでの間、時間が掛かるのではないでしょうか?一方で、医療保険は加入すると同時に入院給付金などの保障を得ることができます。
そして入院は不測の事態です。(例として)毎月、5000円の保険料さえ払っておけば、いつ入院しても決まった給付金を受け取れる、と思えば、保険料は安心料という考え方も成り立つのではないでしょうか?
(民間の)医療保険は進化していますが、その真価は、お一人おひとりの家計と、入院というリスクに対する考え方と言えるでしょう。
「小さなリスクは家計で、大きなリスクは保険で」というスタンスに立つのなら、大きなリスクとは、どのようなリスクなのかを、家計と共に問うてみると良いでしょう。
なお、ここで言う家計とは貯金を含みます。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師