世界に誇れる日本の国民皆保険制度は、これから維持できるのか

配信日: 2018.05.23 更新日: 2019.01.10

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世界に誇れる日本の国民皆保険制度は、これから維持できるのか
平成24年7月9日より、住民基本台帳法の改正に伴い、外国人も「3カ月を超える在留資格があるなど」の条件を満たすと、国民健康保険に加入しなければならないことになっています。
 
改正前に比べると国保への加入のハードルが大きく下がっています。
 
このためか、外国人による国保の不正使用が問題になっているようですが、防ぐ有効な手立てはないようです。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

世界に誇れる日本の国民皆保険制度

日本では、サラリーマンとその家族は健康保険組合や協会けんぽが運営する「健康保険」、公務員とその家族は「共済組合」などの被用者保険に加入し、自営業者などは市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。
 
なお、75歳以上の人はすべて「後期高齢者医療制度」に加入します。つまり、私たちは、いずれかの医療保険に全員加入します。
 
そして、病気やけがをしたときには、病院や診療所などの医療機関や調剤薬局で、診察・投薬・治療など質の高い医療サービスを安価で受けることができます。しかも、全国どこの病院でも保険証1枚あれば診てもらえます。
 
私たちが負担する医療費の割合は、原則、かかった医療費の3割となっています。
 
ただし、義務教育就学前の子どもでは2割、70歳以上75歳未満の被保険者は所得に応じて2割または3割、75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者は所得に応じて1割または3割となっています。
 
さらに、この自己負担額が高額になった場合、この自己負担分が過重なものとならないように、医療費の自己負担分に対して一定の上限を設ける高額療養費制度とう仕組みがあります。
 
たとえば、100万円の医療費で、窓口負担(3割)が30万円かかる場合でも、月収が28万円以上53万円未満の給与所得者であれば、実際の自己負担は9万円程度で済みます。
  

国民健康保険が適用される外国人

平成24年7月9日より、住民基本台帳法の改正に伴い今までの外国人登録制度が廃止となり、在留期間が3カ月を超える外国人も住民票が作成され、国民健康保険の加入対象となりました。
 
また、在留期間が3カ月以下でも、在留資格が「興行」「技能実習」「家族滞在」「公用」「特定活動(医療を受ける活動またはその人の日常の世話をする活動を指定されている場合を除く)」の場合で、資料により3カ月を超えて滞在すると認められる人も加入できます。
 
改正前は、1年以上の在留資格がある、または客観的な資料により1年以上、日本に滞在すると認められることが、条件になっていました。
 
改正により、外国人が国民健康保険に加入するハードルが大幅に下がっています。また、前年度に日本で収入がなければ、保険料も当初は月数千円程度ですみます。
 

国民皆保険は維持できるか

日本の医療費は40兆円を超えて、危機的な状況にあります。がん免疫療法で話題になったオプジーボのような高額新薬にも保険が適用になると、患者にとっては歓迎すべきことですが、国にとっては財政を大きく圧迫することになります。
 
外国人の国民健康保険への加入のハードルが下がったことにより、保険適用の高額ながん治療の目的などで悪用するケースがあるようです。
 
一応、このような利用は認められていませんが、実際、取り締まるのは現実的に無理でしょう。病院側も保険証があれば、とりっぱぐれがないので、不正を暴くインセンティブは働かないのではないでしょうか。
 
日本ほど質の高い医療を安価な費用で、どこの病院でも保険証1枚で受けられる国はないのではないでしょうか。外国人の中には「3カ月超で国保加入」を悪用する人がいるようです。
 
万一、不正使用が爆発的に増えれば、日本の皆保険制度の維持は難しくなるかもしれません。そうなる前に、何らかの歯止めを考えておくことが必要ではないでしょうか。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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