~あなたが知らない小額短期の世界~
配信日: 2018.07.27 更新日: 2019.01.10
本稿では少額短期保険を検討する上で、知っておきたい留意点について考えてみることにしましょう。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
少額短期保険と(一般的な)生命保険&損害保険と共通のルール
少額短期保険といえども、やはり「保険」ですから、少額短期保険と一般的な生命保険&損害保険とで共通のルールがあります。
例えば、「募集人資格」と「募集人登録制度」。生命保険なら「生命保険募集人資格」があり、損害保険なら「損害保険募集人資格」があります。そして「募集人登録」を受けた保険会社の商品のみを取り扱うことができます。
少額短期保険も同じで、「少額短期保険募集人資格」があり、「募集人登録」を受けた少額短期保険会社の商品のみを取り扱うことができます。
それからクーリングオフ。少額短期保険もクーリングオフの制度の利用が可能です。ただし、保険期間が「1年以内」のご契約の場合には、クーリングオフは「適用除外」、つまり利用することができません。
少資本の会社が多い
少額短期保険を検討する上で直接的な影響は無いかもしれませんが、一般的な生命保険会社&損害保険会社の資本金は最低10億円が必要です。
例えば、大手ではない「中堅」とされる生命保険会社の資本金は625億円あります。しかし、少額短期保険の資本金は最低1000万円でOKです。なので、資本金が数億円程度の少額短期保険も珍しくありません。
そのためでしょうか?少額短期保険は制度が始まって十数年ですが、そのわずかな間に少額短期保険のオーナー(筆頭株主)が変わり、会社名が変わった少額短期保険会社もあります。
また、元々、「少額(=生保系300万円以下、損保系1000万円以下)」で、「短期(=生保系1年間、損保系2年間)」という契約の保険商品のみを取り扱うのが少額短期保険です。
取り扱うことができる保険に合わせて、「少ない資本金でもOK」ということなのでしょうね。
契約者保護機構について
一般的な生命保険や損害保険には、それぞれ「生命保険契約者保護機構」と「損害保険契約者保護機構」があります。
「契約者保護機構」とは保険会社の破たんに備えるもので、いわば「保険会社のための保険」みたいなものです。少額短期保険は契約者保護機構の対象になっていません。では、少額短期保険には「保険会社のための保険」は無いのでしょうか?
少額短期保険には「保険会社のための保険」の代わりとして「営業保証金の供託」が義務付けられています。
これは、少額短期保険会社が前年度に受け取った保険料の5%+1000万円を国に預けておく、という義務です。また、少額短期保険会社の中には、独自に「保険会社のための保険(=いわゆる再保険)」を掛けているところもあります。
保険料控除がありません
一般的な生命保険には3つの保険料控除(生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険控除)があり、一般的な損害保険には「地震保険料控除」があります。自営業の方とは異なり、お勤めの方は節税の機会がなかなかありませんから、保険料控除はありがたいものです。
しかし、少額短期保険には保険料控除も、そして保険料控除に代わるものもありません。
もっとも、少額短期保険は保険料の金額は一般的な生命保険や損害保険に比べてそれほど高くありませんから、仮に少額短期保険が保険料控除の対象になったとしても、期待するほどの節税効果は得られないかもしれませんね。
まとめに代えて
一般的な生命保険や損害保険は明治時代から続いていますが、少額短期保険は平成の半ばに始まった、まだまだ若い制度、つまりニューフェイスです。その存在は地味でも、その数は増えています。上手に活用しましょう。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師