更新日: 2023.08.08 生命保険

生命保険に関してトラブルになったときに役立つADR制度とは?

生命保険に関してトラブルになったときに役立つADR制度とは?
「契約内容が思っていたのと違った」「入院給付金が支払われない」など、生命保険に関するトラブルは少なくありません。このようなトラブルにあった際、知っておくと役立つのが「ADR制度」です。
 
ADR制度とは何か、メリット・デメリットについて解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生命保険に関してトラブルになったときの解決手段

生命保険に関してトラブルになったとき、まずは、営業職員や代理店と交渉しましょう。この時点で解決しない場合は、生命保険会社本社のお客様相談窓口に相談しましょう。それでも解決しなければ、一般社団法人生命保険協会の生命保険相談所に相談してください。
 
生命保険相談所では、申出のあった苦情について、相談者の疑問や悩みを整理し、解決に向けたアドバイスを無料で受けることができます。もし相談所で疑問や悩みを解決できなければ、該当の生命保険会社に、和解のあっせんや解決依頼などを実施して、早期解決につとめてくれます。
 
しかし、生命保険相談所が適正な解決につとめたにもかかわらず、当事者間で問題の解決がつかず訴訟に発展するかもしれません。訴訟となると費用も時間がかかり、二の足を踏んでしまうかもしれません。そこで検討したいのがADR制度の利用です。
 
訴訟をする前にADRの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
 

ADRの利用

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、裁判によることなく、法的なトラブルを解決する紛争解決方法です。
 
ADRは、訴訟手続きによらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のために、公正な第三者の関与により、その解決を裁判のような厳格な手続きによらず柔軟に図る手続きです。
 
生命保険の問題に特化したADR機関として、一般社団法人生命保険協会の裁定審査会があります。選定審査会の委員は、金融や保険の知識であったり実務経験があったりする弁護士と、消費生活相談員、生命保険相談所員の3名で構成されています。この3名は中立公正な第三者(生命保険会社と利害関係がない)です。
 
また、選定審査会を含む指定紛争解決機関の業務の円滑かつ公正な運営のために、外部からの有識者で構成された裁定諮問委員会を設置します。そして、業務の運営にかかわることについて、委員会からの意見を参考にすることで、運営改善を行っているのです。
 

ADRの利用のメリット

事実確認は主に書面によって実施されますので、全国どこからでも手続きができます。事情聴取を行う場合は、お住まいの近くの連絡所にてテレビ会議システムを利用して行うことも可能です。裁定手続きは非公開です。裁定費用は無料です。
 
一般社団法人生命保険協会の裁定審査会の裁定は、裁判手続きに比べ、迅速性、簡易性、廉価性、柔軟性(法令と約款のみに重きをおかない)、秘密性、専門性があります。
 

ADRの利用のデメリット

ADRは当事者間の話し合いで解決を目指すものです。生命保険会社には、原則として和解案を受諾する義務がありますので、相談者が和解案を受諾したときには、和解が成立します。しかし、和解案を受諾しないときには、裁定不調により裁定手続きは終了します。
 
また、相談者が和解案を受諾した後1ヶ月以内に、相手方保険会社が訴訟提起をした場合等は、裁定不調により裁定手続きは終了します。このような場合、裁判所に対する訴訟提起に発展してしまいます。
 
トラブルに発展しないように生命保険加入時に、保険金が支払われない場合など留意点についてよく確認することが大切です。
 

出典

一般社団法人 生命保険協会 ホームページ
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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